文部科学省が作成した高校生向けに選挙や政治について教える副教材の1ページ。18歳以上と18歳未満で異なる違反行為などが説明されている(文部科学相提供、時事通信フォト)

文部科学省が作成した高校生向けに選挙や政治について教える副教材の1ページ。18歳以上と18歳未満で異なる違反行為などが説明されている(文部科学相提供、時事通信フォト)

 つまり、落選運動は選挙運動にあたらないのである。冒頭で「年齢満18歳未満は一切の選挙運動(国政選挙および地方選挙)はできない」と書いたが、未成年でも誰かを当選させる明確な意図が明示されていない限り「○○落ちろ」というだけの落選運動はしても構わないのである。かつて学生団体のSEALDs(2016年解散)の選挙中の活動に対して、未成年者がいるということで選挙違反疑惑がネットを中心に起きたが、あくまで落選運動であったため違反とはならなかった。

 この根拠は1930年(昭和5年)の裁判でとてつもなく古い判例なのだが、現代でも落選運動は選挙運動にあたらず、ゆえに未成年でも落選運動は認められる、ということになる。ただし落選運動であっても公職選挙法の決まりには留意する必要がある。また誹謗中傷は落選運動の目的外利用にあたり、当たり前の話だが選挙違反以前の侮辱罪や名誉毀損となってしまう恐れがあるため注意されたい。これらを守れば高校生だろうと中学生だろうと、サイト側の年齢制限およびレギュレーションを満たしている限り「○○落ちろ」「○○を落とそう」はOKである。LINEなら年齢確認による機能制限やキャリアなどのフィルタリングはあるが年齢制限はない(推奨年齢はある)ので小学生でも園児でも落選運動はできる。

 ただ正直、インターネットにおける公職選挙法も2013年の制定から10年近くが経ち、いろいろと現状にはそぐわなくなってきていることは事実である。当時はブログや掲示板、メールといった手段に主眼を置いて制定されたが、現在ではSNSやIM(Instant Messenger)に移り変わっている。先にも触れたがメールはダメなのにLINEは問題ないという状況は時代にそぐわなくなっている。また若者の政治に対する関心を高めるためにも未成年の選挙運動を条件つきながら一部解禁するべきでは、という意見もある。

 ともあれ、未成年者はくれぐれもインターネットで選挙運動をしないように注意して欲しい。また保護者の側も我が子を公選法違反者にしないためにも気をつけたい。ただし法律とは面白いもので落選運動は選挙運動でなく未成年でもルールを遵守する限りOKなので、どうしても許せなかったり気に入らなかったりの候補者がいるなら、子どもの政治参加の取っ掛かりとしてありかもしれない。

 18日間の選挙戦、大人も子どももルールを守った上で、しっかり政治参加という国民の権利を行使しよう。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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