この西アフリカ三国の流行は特に病原性の強いザイール株ウイルスで、未治療の場合には致死率が90%にも上るものでした。さらに近年、整備されたハイウェイを潜伏期間中の感染者が車で移動することで、遠い村から大都市にウイルスが侵入。人口密度や人の流動性の高さから、流行期間も長期に及び、とうとう欧米諸国にもこの凶悪ウイルスが飛び火しました。
これに驚愕した先進諸国は、急遽、エボラワクチンと薬の開発に着手。2015年秋、米国陸軍感染症医学研究所からエボラウイルスの増殖を抑制するとして発表されたのが、現在、新型コロナの治療薬として有名なレムデシビルです。
新型コロナウイルスもコウモリのウイルスと90%の相同性を持っていますが、自然宿主動物は何なのか。また、どうやって人の間で感染伝播できる変異を遂げたのか。不明のままなのです。サル痘もまた、動物から来た感染症でしたね。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
イラスト/斉藤ヨーコ
※週刊ポスト2022年7月8・15日号