ライフ

著者インタビュー『ルコネサンス』有吉玉青さん 時を経て再会した父と娘の交流

有吉玉青さんに著書『ルコネサンス』について聞いた

有吉玉青さんに著書『ルコネサンス』について聞いた

【著者インタビュー】有吉玉青さん/『ルコネサンス』/集英社/2035円

【本の内容】
《この人だ。ついにその時が来た。顔は知らないはずなのに、アルバムをよく見る余裕はなかったはずなのに、そしてアルバムの写真よりずっと歳をとっているのに、かすかに残る記憶が、その男に重なる》──。大学院生の珠絵は、亡き祖母と母と暮らした一軒家でひとり暮らし。両親は、珠絵が生まれてすぐに離婚し、父・陣内彰生とは20数年会っていなかった。《「お父さんに、会ってみないか」》という伯父の勧めをきっかけに、父の行きつけの銀座のバーに通うようになり、娘と名乗らぬまま再会を果たす。まるで歳の離れた恋人のような逢瀬を重ねていく2人はどんなふうに父娘としての時間を過ごしていくのか。

 「これって面白い関係だな、小説になるんじゃないかな、と」

 ものごころつく前に両親が離婚し、父親の顔をよくわからないまま成長した娘が、大人になってから父と再会する。『ルコネサンス』は、有吉さんが、自分自身の体験をふまえ、離れ離れに暮らす父娘の再会を描く小説だ。

「書くときは、恋愛小説みたいにできたらいいな、と思っていました。父と娘は永遠の恋人だと言ったりしますよね? 男性の友達にも、お嬢さんが生まれたばかりなのに、『一生、嫁にやらない』と言っている人がいますし。女友達の中には、お父さんがすごく好きな人もいれば、『一緒にお鍋を食べるのも嫌』と言う人もいて、私にはどちらの経験もないから、書きながら、どういうことなのか考えてみたかったんですね」

 有吉さんの母は作家の有吉佐和子(1931~1984)で、父は、まだ国交のなかった旧ソ連からドン・コザック合唱団やボリショイ・バレエを招聘したことで知られる、伝説のプロモーターで実業家の神彰(1922~1998)である。興行をやめた後は、居酒屋チェーンの先駆け「北の家族」を創業している。

「私が生まれてすぐに両親が離婚したこと、ずっと会っていなかった父と、私の結婚が決まったことをきっかけに再会したのは事実ですけど、小説の細部は私が考えたことで、ほとんどがフィクションです。本の帯の『自伝的フィクション』というのは編集部で考えてくださったもので、単に『小説』として出すと、私小説で、全部本当のことなのかな?と思う読者もいらっしゃるかもしれないので、あえて『自伝的』という言葉を入れました」

 小説の主人公で哲学を研究する大学院生の「珠絵」は、父「陣内彰生」の友人から届いた手紙をきっかけに、陣内が行くという銀座のバーに通い始める。20数年ぶりに父と再会を果たし、娘とは名乗らないまま、時折、陣内に会うようになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中村芝翫の実家で、「別れた」はずのAさんの「誕生日会」が今年も開催された
「夜更けまで嬌声が…」中村芝翫、「別れた」愛人Aさんと“実家で誕生日パーティー”を開催…三田寛子をハラハラさせる「またくっついた疑惑」の実情
NEWSポストセブン
ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
安倍昭恵夫人に「出馬待望論」が浮上するワケ 背景にある地元・山口と国政での「旧安倍派」の苦境
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《秘話》遠野なぎこさんの自宅に届いていた「たくさんのファンレター」元所属事務所の関係者はその光景に胸を痛め…45年の生涯を貫いた“信念”
週刊ポスト
政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相(時事通信フォト)
《進次郎氏のほうが不評だった》江藤前農水相の地元で自民大敗の“本当の元凶”「小泉進次郎さんに比べたら、江藤さんの『コメ買ったことない』失言なんてかわいいもん」
週刊ポスト
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
水原一平の賭博スキャンダルを描くドラマが「実現間近」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」、注目される「日本での公開可能性」
週刊ポスト
川崎、阿部、浅井、小林
女子ゴルフ「トリプルボギー不倫」に重大新局面 浅井咲希がレギュラーツアーに今季初出場で懸念される“ニアミス” 前年優勝者・川崎春花の出場判断にも注目集まる
NEWSポストセブン
6年ぶりに須崎御用邸を訪問された天皇ご一家(2025年8月、静岡県・下田市。撮影/JMPA)
天皇皇后両陛下と愛子さま、爽やかコーデの23年 6年ぶりの須崎御用邸はブルー&ホワイトの装い ご静養先の駅でのお姿から愛子さまのご成長をたどる 
女性セブン
「最高の総理」ランキング1位に選ばれた吉田茂氏(時事通信フォト)
《戦後80年》政治家・官僚・評論家が選ぶ「最高の総理」「最低の総理」ランキング 圧倒的に評価が高かったのは吉田茂氏、2位は田中角栄氏
週刊ポスト
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン