小説の「珠絵」は父を「ジンさん」と呼ぶが、あるとき、「お父さんの故郷に行こう!」と言って陣内を感動させる場面がある。たおやかな印象の有吉さんが実際に口にしたのは、「お父さん」ではなく、「オヤジ」だったそうだ。
「だって『お父さん』より『オヤジ』のほうが本当にぴったりくる人だったんです。父も結構、気に入っていたみたいで、雑誌のインタビューで娘にそう呼ばれてる、とうれしそうに話しているのを読んだことがあります」
【プロフィール】
有吉玉青(ありよし・たまお)/1963年東京都生まれ。ニューヨーク大学大学院演劇学科修了。大阪芸術大学教授。1989年、東京大学大学院在学中に母・佐和子との日々を綴ったエッセイ『身がわり』を上梓、1990年に同作で坪田譲治文学賞を受賞。2014年に、母を支えた祖母を描いたエッセイ『ソボちゃん』を発表。その他、小説に『月とシャンパン』『美しき一日の終わり』、エッセイに『雛を包む』『恋するフェルメール』など著書多数。6月5日、和歌山市に「有吉佐和子記念館」が開館した。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2022年7月7・14日号