国内

【安倍元首相銃撃】祖父の岸信介首相もナイフで刺されていた 過去にも起きていた政治テロ事件

突然の襲撃を受けた安倍元首相。かつても、政界では痛ましい事件も(写真は2019年)

突然の襲撃を受けた安倍元首相。かつても、政界では痛ましい事件も(写真は2019年)

 安倍晋三・元首相が奈良で街頭演説中に銃撃され、病院に緊急搬送された。「心肺停止の状態」と報じられている。山上徹也容疑者は元海上自衛隊員で、その場で警察に逮捕された。動機や背後関係などはこれから取り調べが進むが、政治テロ事件であることは間違いない。

 安倍氏は自民党最大派閥の領袖であり、政界に大きな影響力を持つ。それだけに、事件が7月10日投開票の参院選、今後の日本の政治に及ぼす影響は計り知れない。

 こうした政治家へのテロ事件は、過去、数多く起きている。戦前は原敬・首相の東京駅での刺殺事件(1921年)、浜口雄幸・首相もやはり東京駅で銃撃され(1930年)、一命を取り留めたが、首相を辞任した。
 
 戦後は日米安保条約の改定をめぐって左右対立が激化した1960年に2つの政治テロ事件が起きた。

 7月には、安倍氏の祖父である岸信介・首相が内閣総辞職前日、首相官邸から出てきたところを元右翼団体メンバーだった男に登山ナイフで左太ももを刺され、重傷を負った。後任に決まった池田勇人氏の自民党総裁就任パーティーを終えたところだった。犯人は「反省を促す意味でやった」と供述している。

 同年10月には、社会党委員長の浅沼稲次郎氏が日比谷公会堂で開かれた総選挙に向けた演説中に、演壇に駆け上がってきた右翼少年に腹部を刺されて死亡した。11月の総選挙には浅沼氏の妻・享子氏が後継出馬して当選した。

 1975年には、三木武夫・首相が佐藤栄作・元首相の国民葬の最中、日本武道館の西玄関前で遺骨を出迎えるために待機していたところを右翼団体の男に顔を殴打された。この事件を機に、警視庁は要人警護の専門チームとしてSPを発足させた。また、首相になる前だが、宮沢喜一・元首相は1984年、宗教団体を名乗る男に都内ホテルに呼び出され、面会したところ灰皿で殴られる事件に遭った。

 1989年にも山口鶴男・社会党書記長が滋賀県での演説会で右翼の襲撃を受け、首を殴打されたが、犯人が拘束されるとそのまま演説を続けたことで知られる。

 その後も政治テロは続いた。1992年3月には「自民党のドン」と呼ばれた金丸信・自民党副総裁が栃木で演説中、右翼団体構成員の男に銃撃された。金丸氏は無事だったが、その直後に東京佐川急便からの5億円の闇献金事件が発覚し、検察の捜査を受けて副総裁を辞任。これが引き金となって自民党大分裂につながり、翌年の総選挙で自民党政権は倒れて細川内閣が誕生した。

 その細川護煕・首相も退陣直後の1994年5月、都内のホテルで開かれた「日本新党・東京」の設立パーティーで挨拶して会場を出たところ、ホテルのロビーで右翼団体幹部の男が短銃を天井に向けて発砲した。ケガはなかった。逮捕された男は「戦争責任発言や経済政策に腹が立ってやった」と供述した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン