騒動後に、師匠の元・朝潮は退職(時事通信フォト)
高砂部屋の環境も大きく変わった。不祥事の発覚当時、すでに現在の高砂親方(元関脇・朝赤龍)に代替わりしていたが、「65歳定年後も再雇用で協会に残った先代の元・朝潮(当時は錦島親方)が部屋を実質的に取り仕切っていた」(前出・相撲ジャーナリスト)という。
「キャバクラ通いの責任が朝乃山自身にあるのは当然だが、元・朝潮の杜撰な管理・指導にも大きな問題があった。朝乃山の醜聞発覚後、元・朝潮がコロナ禍で協会が定めた原則私的外出禁止期間中に朝乃山ら弟子をタニマチとの飲食に連れ回していたことが明らかになり、退職に追い込まれています。現・高砂親方が部屋を取り仕切るようになり、朝乃山がストレスを感じることも少なくなっているだろう」(同前)
精神面での安定が得られる環境になったということだ。前出の高砂一門関係者もこう言う。
「気持ちの面ではえらく余裕があると聞いている。焦ることもなく、落ち込むこともない。“来年の3月場所では幕内に戻る”と強気の発言をしているそうです。最速のペースで番付を上げていける自信があるということ。この春に右太ももの軽い肉離れをしたようですが、無理せずに余裕をもって完治させたと聞きます」
冷たい目線との苦闘
ただ、復帰後にどこまで活躍できるかはこれからの話で、朝乃山にとって本当の正念場となる。
「現在の高砂部屋には将来を期待される学生相撲出身者が多いが、まだ幕下レベルです。出稽古が禁止されるなか、部屋内で敵なしだとしても、どれだけ実力を維持できているかは疑問が残る。部屋ではウエイトトレーニングが流行っているというから、体はできているのだろうが、相撲勘が鈍っていないか不安ですね」(同前)
緊張感ある本場所の土俵に1年間も上がっていないことの影響は決して小さくない。また、15日間土俵に上がっていた関取が幕下に陥落し、1場所で7日間しか土俵に上がらないとペースがつかめないという懸念も指摘されている。
「朝乃山は最短で幕内に復帰するつもりかもしれないが、一番でも取りこぼしがあった時に気持ちの余裕が維持できるかが心配です。また、1年間の謹慎中に幕内力士の顔ぶれも大きく変わった。若手の台頭が著しいなか、30歳が見えてきた朝乃山が大関まで戻るのは厳しいかもしれない」(相撲担当記者)
乗り越えなくてはならない壁はまだまだあるということだ。
それでも、朝乃山は勝ち続けるしかない。自身が起こした不祥事によって、確実視されていた「親方として協会に残る」という未来さえ危うくなっているからだ。