インフルエンザウイルスは毎年少しずつウイルスの姿形を変化(小変異)させて、これまで人が獲得したインフルエンザ免疫をすり抜けて流行を繰り返してきました。この2年以上、新型コロナのパンデミックの影響でインフルエンザの流行がほとんどないことは、裏を返せば“人類のインフルエンザに対する基礎免疫が低下している”ということでもあります。ひとたび流行が発生すれば、その健康被害が大きくなることが想定されます。さらに小さいお子さんたちは、約2年間インフルエンザの流行がなかった分、初めて感染を経験するという子供も多くなることでしょう。初感染はウイルスに暴露されれば感染しやすく、重症化しやすい傾向があります。
今大切なことは、行政はコロナ対策に加えてインフルエンザ薬や検査キットの増産に、小児科病床を含めた病床の確保を十分に準備すること。私たちは、今年の秋に接種できる2022年のインフルエンザワクチンを受けることでしょう。
日本ワクチン学会でも2022年は日本で流行するおそれがあるとして、インフルエンザのワクチンを強く推奨するとしています。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2022年7月29日号