輸入した原薬をそのまま利用するケースも約半数
静岡や神奈川などを中心にポプラ薬局を展開する薬剤師の小島真さんは、中国産の薬を取り巻く最大の問題は、原材料や添加物の規制が非常にゆるいことだと指摘する。
「過去に、中国から個人輸入された未承認医薬品の“やせ薬”に、体に毒となる物質が高濃度含まれていることがありました。甲状腺機能障害や重い肝機能障害が起きて、死者も報告されているにもかかわらず、製造や原料への規制はほとんどない。こうして明るみに出るのは氷山の一角である可能性も高い」
気をつけるべきは中国産だけではない。郡司さんはインドの工場で製造される薬も危険性が高いと警鐘を鳴らす。
「インドの薬には強い耐性菌が混入している可能性が指摘されています。特に南東部にあるテランガナ州メダック県には、抗生物質を大量生産する工場が集まっており、世界的に有名です。
インドでは産廃規制がゆるく、抗生物質を製造する工場が流した廃液で河川が汚染されていることが問題になっています。その結果、薬剤耐性を備えたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が大量に河川から検出された。そうした工場で作られた抗生剤に強い耐性菌が入り込めば、人体に悪影響を及ぼす危険性があります」
恐ろしいのは国内メーカーが販売する薬の中にも、こうした海外の劣悪な状況で作られた「原薬」を使ったものが少なからず存在している事実だ。実際、国内で使用される高血圧や糖尿病の薬に、発がん性物質が混入していた事件もあった。
「2018年、中国で製造して国内メーカーが販売している降圧剤『バルサルタン』の原薬から、発がん性物質の『ニトロソアミン類』が検出されました。微量だったこともあり、この影響でがんになるかどうかまでは定かではありませんが、翌年には、胃薬や糖尿病の薬からもニトロソアミン類が見つかりました」(谷本さん)
事態を重く見た厚労省は、製造販売業者に対して自主点検を行うよう指導した。しかしいくら細かく点検したとしても、海外での製造過程を常に監視することは不可能だ。加えて国産であれば不祥事があれば、刑事事件になったり厚労省に行政処分されるなどするが、海外で製造されたものに関しては基本的に“治外法権”だ。2014~2016年にかけて、上海のクリニックで患者の診療を行っていた国際未病ケア医学研究センター長で医師の一石英一郎さんが言う。
「中国では国をあげて薬の製造を推進していますが、品質に不安が残るという声も少なからず上がっています。特に当時は工場からの廃液の処理も含めて、行政による規制の甘さが懸念されていました。
実際に私が上海で働いていた頃、中国政府は外国企業に対しては厳しい規制を課していましたが、国内企業には取り締まるというよりも、大量生産のために鼓舞しているようにすら感じました」
※女性セブン2022年8月11日号