のめり込んでいる団体が「趣味の範疇」なのか、「危険」なのか、それを見抜くポイントが3つある。藤井さんが解説する。
「1つめは、のめり込んだ『経緯』です。本人から近づいて行ったのなら趣味とも言えますが、何度も勧誘を受けた末にハマったのなら、善良な団体ではない可能性がある。2つめは『状況』です。その団体の思想や活動が人生において最優先になっていたり、依存先が特定の団体に限定されていたら要注意。危険な団体は、『自分たち以外は悪』と排他的なことが多いのです。
3つめは『お金』です。基準がわかりにくいと思うかもしれませんが、洗脳されている人は何百万円といった異常な大金を持ち出す。身近な人であればすぐに気づきます」
1つでも当てはまる場合は注意が必要だ。
認知症で陰謀論にハマる
岡田さんは、洗脳の解き方には大きく2種類あると話す。
「北朝鮮から帰国した拉致被害者の蓮池薫さんは、兄の透さんが徹底的に論破し、相手の信念を崩したとされます。ただ、かなりの荒療治であり、失敗すると互いの関係性が壊れてしまう恐れがある。
もう少し一般的なのは、外堀から埋めていくアプローチです。相手が信じているものに対し、『信じることも含めて、あなたを受け入れます』と受容すると、出口が開かれ、信仰や依存にも揺らぎが起こる。これまで目をつむっていた矛盾や問題が意識されやすくなり、目を覚ますことにつながりやすいのです。依存している行為や教団しか居場所がない人に、新たな居場所を作ってあげることが大事なのです」
藤井さんは、こんな相談を受けたと話す。
「夫を亡くし、心理的にひどく落ち込んでいた高齢の母が、友人に誘われて投資系のマルチ商法のセミナーに参加したそうです。寂しい気持ちが紛れて救われたらしいですが、背後にはカルト教団がいて、ついには家を売る寸前まで状況が悪化した。
そんな母に悩んでいた息子さんから相談され、マルチをやめる、やめないといった話よりも、お母さんにマルチ以外のことに時間を使ってもらう提案をしました。孫のお守りなど、あれこれ頼み事をしているうちに母親は多忙になり、頼られている実感も生まれ、最終的にマルチから離れることができました」
いくら家族でも、自分たちの力だけで洗脳を解くのは簡単ではない。場合によっては、医療機関を頼ることも必要だ。藤井さんが続ける。
「精神疾患が原因で依存が起きている場合もあるので、精神科や心療内科に相談してもいいでしょう。ただし、カウンセラーは資格のない怪しい人の可能性もあるため、公認心理師と臨床心理士の資格を持っている専門家がおすすめです。本人不在で、家族が相談するだけでも構いません。
高齢者の場合は認知症や幻覚、妄想によって陰謀論などにハマることもある。治療を受け、疾患が緩和したら自然と落ち着いた人もいます」