完成形ではない
試合後のインタビューでは、樋口プロが「結果的にこれからもやっていることに自信が持てますよね」と話し掛け、渋野は「メジャーでこういう結果が出てうれしい。波もありますが自分の心の持ちようによってゴルフが変わるなと思った4日間でした。いろいろ学べました」と答えている。
渋野のスイング改造は批判的に捉えられることも多かったが、今回の活躍で払拭されるのだろうか。プロゴルファーの沼沢聖一氏は、「形で見れば2019年に全英女子オープンを勝った時のスイングのほうがオーソドックスでよかったと思います」としたうえで、トップを極端に低くした渋野のスイングについてこう評す。
「現在の肩よりトップが低い形では、体幹に頼ってヘッドスピードだけで打っている。それでも、インパクトゾーンがいいのでボールは真っすぐ自分のイメージ通りに飛んでいます。これは、アマチュアゴルファーが真似したい“お手本”ではないと思います。あの低いトップ位置から、渋野のようなヘッドスピード、高さ、飛距離を出すのは困難。
アッパースイングで打つドライバーはまだしも、ダウンブローで打っていかないといけない2打目以降のクラブで、渋野が正確なインパクトをできるのは豊富な練習量のたまもの。土の上から打っているのと同じような状態になる硬いリンクスの芝でもミスショットがなかったが、アマチュアはふかふかのフェアウエーからでもあの打ち方をしたらダフってしまうでしょう」
そうした難しい打ち方をしていることが、成績が安定しない原因になっていると沼沢氏は見ているわけだ。多くのプロやツアー関係者も、現在の渋野のスイングを完成形とは捉えていないようだ。
「今のままだと、フィニッシュまで一気に持っていけるスピードが必要なスイングの形になっています。それを可能とする筋力をキープしなくてはならないことを考えると、長く続けるのは厳しい。だからこそ、まだスイング改造の途中という見方が妥当でしょう。本来、素振りと本番が同じスイングでなければならないが、渋野は素振りではトップが肩より高くて、本番のスイングと形が違う。やはり、まだ理想のスイングは完成していないと想像できます。今回の全英のように結果が出る試合もあるのでいい、悪いは断定できないが、安定的な成績を残すにはまだまだと言えます」(沼沢氏)
渋野のスイングを巡る議論は、この先も続きそうだ。