抗争は市民を震撼させてきた(2019年11月尼崎市の路上で神戸山口組幹部が軍用自動小銃で射殺された事件直後/共同通信社)

抗争は市民を震撼させてきた(2019年11月尼崎市の路上で神戸山口組幹部が軍用自動小銃で射殺された事件直後/共同通信社)

 それでも神戸山口組の井上組長は、決して引退せず、断固として神戸山口組を解散しない意向だという。が、暴力団たちは冷徹に現状をとらえ、神戸山口組を突き放している。暴力団はひどく変わり身が早い。今回も取材中、かつて神戸山口組を持ち上げていた暴力団員が「神戸山口組は詰んだ」と言うので、「抗争の勝敗は暴力でしか左右されない」と指摘した。どれだけ劣勢でも、事件を連続させれば潮目が変わる。軽々しく「詰む」などと、よく言えたものである。

 ただし、どうしても否定できないファクトがある。神戸山口組は事態を挽回させる具体的なアクションを起こしていない。言葉でどう繕っても、戦況を変えようとする動きがない。六代目山口組は今やなんの脅威も感じていない。報復はないと高を括っているのだ。

 神戸山口組を脱退した寺岡若頭もかねてから抗争には消極的とみられていた。本来なら抗争の陣頭指揮を執る若頭なのに、この7年、一切、報復しなかったからだ。背後には、深刻な理由があるのだろう。自身の中で幕を引いているのかとさえ感じる。

 が、山口組分裂の首謀者となり、若い衆を巻き込んだ責任はある。自分たちの喧嘩に巻き込んだ他団体への責任だってある。そこで寺岡若頭は他団体と交渉、相応の人物を仲裁人にして、井上組長に引退を決意させようとしたらしい。井上組長さえ引退すれば、すべての幹部が身を引き、若者たちは山口組に戻れる。

 山口組とて抗争を長期化させたくはない。神戸山口組が自主解散するなら、首謀者の命の保証も含め、ある程度の条件は呑むだろう。

消えた井上組長の引退説

 2021年4月、寺岡若頭、広島県尾道に本拠を置く独立組織・侠道会の池澤望会長、同じく独立組織・浅野組の中岡豊総裁は、九州・道仁会の小林哲治会長と会談した。その後に広まったのが井上組長の引退説だった。

 道仁会は福岡県の久留米市に本部を置く武闘派団体である。独立独歩で、山口組分裂後、謀反者の神戸山口組とはもちろん、六代目山口組とも一線を引くと公言している。もし小林会長の説得により井上組長が引退、神戸山口組が解散して抗争が終わったとする。山口組は反山口組を公言する道仁会の奔走が気に食わなくても、道仁会に義理を背負う。

 寺岡若頭のもうひとつの狙いは、道仁会の仲介で抗争を終結することで六代目山口組に浅野組との遺恨を流させることだったのではないか。

 前述した酒梅組、会津小鉄会のほか、分裂騒動の煽りを受けた独立団体が、岡山県笠岡市の浅野組だ。2017年、両組織に不穏なムードが漂うと、六代目山口組は浅野組を訪れ、後見と親戚縁組の解消を通達した。

「ええか、こっちから縁切りしたんや。そこは間違ってくれるなよ」

 と、直参組長から電話が入るほど六代目山口組は激昂し、神経質だった。浅野組にすれば、兄弟喧嘩の煽りを受けた炎上劇でも、六代目山口組側の遺恨は燻ったままだ。

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