さらに、こうした異常性欲は男性だけでなく女性にも見られるという。
「訪問診療でも医師や男性スタッフの股間や尻を触ってきて、逃げると『触らしてよ、触りたいんだから!』とはっきり要求されます。卑猥な言葉を平然と発する女性患者さんも見かけます」(同前)
悪夢のような症状だが、治療法はあると長谷川医師は言う。
「幸いなことに、最近では異常性欲をコントロールできる薬があります。抗認知症の治療薬の中でもブレーキ系(進行予防)のメマリーは効果的です。患者さんの性衝動にブレーキをかけることで効果が出ていると思われます。主治医の先生も知らない方が多いので、困っている場合は患者さん側からメマリーの使用をお願いしてみてください」
長谷川医師は「異常性欲は放置しないでほしい」と訴える。
「異常性欲は様々な問題を引き起こしてしまいます。介護スタッフへの負担から通所サービスの利用を拒否されることもあります。入所施設の場合は介護スタッフのみならず他の入所者さんにセクハラ行為が向けられることがあり、退所という処置をとらざるを得なくなることもある。そして長年真面目に生きてきたのに、人生の最後に異常性欲が出ればどんなに名士であってもそれまで築いてきた社会的信頼や実績もなくなり、尊厳が失われてしまいます」
どの夫婦にも老後に起こりうる問題だ。
※週刊ポスト2022年9月16・23日号