2021年6月、特別支援学校の卒業式での千璃さん。
■「『助けて』と発したら助けてくれる人がいると気づけた」(倉本さん)
倉本:私はやっぱり、千璃の障害のことを知ってもらおうと思ったことが本を書くきっかけではあったんですが、今はもう子育ても中盤に近づいていて、少し違ってきています。
千璃を育てていく中で、「助けて」と言葉を発したら助けてくれる人がいると気づけたことは、私の中ですごく大きな財産。でも世界中には、埋もれたままの「助けて」という声がたくさんあるんだろうなと思って、「一般社団法人 未完の贈り物」の活動をしているんです。助けたい気持ちがあっても、その声を周りが知らなかったら何をしたらいのかわからないですよね。
皆さんのまわりにある「助けて」という言葉を拾い上げられるような優しい気持ちを持ちましょうよ、ということを伝えていきたい。私は奈美ちゃんのように、笑いでストレートに伝えるのと全然タイプが違うけど、でもだからこそ、いろんな方向から少しずつ、世の中を変えられたらいいなと思っているんです。
倉本さんの原作が元となったミュージカルが上演される。
―― 倉本さんの原作がミュージカルとなった「conSept Musical Drama #7 『SERI~ひとつのいのち』」は、10月6日から東京と大阪で上演される。ニューヨーク在住の倉本美香さんは上演に合わせて久々に帰国。10月9日の上演後には出演者を交え、ZOOMでしか話したことがない倉本さん、岸本さんのリアル初対面となるアフタートークが予定されている。
取材・文/桑原恵美子
【プロフィール】倉本美香さん・東京生まれ、学習院大学卒。航空会社に勤務後、ニューヨークに移住。日系企業の米国進出をサポートするビジネスコンサルティング社「OFFICE BEAD INC.」を主宰する一方で、語学アカデミーの企画運営など、海外で得たスキルを日本に逆輸入する様々な事業に携わる。国内で上梓した2冊の著書『未完の贈り物』(産経新聞出版)、『生まれてくれてありがとう』(小学館)を英訳した『Born(e)』を海外出版。世の中で埋もれている「助けて」の声を拾い上げる「一般社団法人 未完の贈り物」理事を兼任。
【プロフィール】岸田奈美さん・100文字で済むことを2000文字で書く作家。1991年、兵庫県神戸市出身、関西学院大学人間福祉学部社会起業学科2014年卒。 在学中に株式会社ミライロに創業メンバーとして加入、10年に渡り広報部長を務めたのち、作家として独立。 世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」「30 UNDER 30 Asia 2021」選出。 著書に『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』『傘のさし方がわからない』(共に小学館)、『もうあかんわ日記』(ライツ社)がある。