2021年9月、コロナ禍で学校が度々封鎖され会えない時も、学校の先生が千璃さんの写真を送ってきてくれたという。(倉本さん提供)

2021年9月、コロナ禍で学校が度々封鎖され会えない時も、学校の先生が千璃さんの写真を送ってきてくれたという。(倉本さん提供)

■「苦しい時には『神頼み』ではなく『人助け』」(倉本さん)

 倉本さんはもともと、そのずいぶん前から、岸田さんのnoteの記事を読んでいてファンだったという。

倉本:私と全く違うアプローチで、障害を持つご家族のことを訴えているところにすごく衝撃を受け、同時にすごく共感したんです。何より文章のテンポに感動しました。私の父が関西出身なので、関西弁混じりの奈美ちゃんの文章はすっと入ってくる感じがありました。

 あの時期は、ちょうどコロナ禍の真っただ中で、友人はコロナで亡くなる、私のイベントの仕事は壊滅状態、いろいろ落ち込むことが重なっていったんです。

 ある時、私が「ニューヨークのお姉さん」と慕っている女性とお話をしていたら、「すごくしんどい時はお寺さんに行く」と言うんです。神頼みかと思ったらそうじゃなくて、ご飯を作って配っていると。

「苦しい時は神頼みじゃなくて、苦しい時こそ人助けよ」という言葉を聞いたその日に、岸田さんの翻訳募集のTwitterを拝見したんです。

 ちょうど、語学アカデミーを立ち上げようとして世界中の人たちと交流があった時で、「もしかしたらそれって、このためにあったのかな」と運命的なものを感じました。

 とはいえ、大勢のファンの中から果たして私のメッセージを見つけてくれるだろうか、という気持ちもありました。でも自分が本当につらい時期だったので、ここで何か力になれるかもしれないということが、私にとっても大きな救いだったんです。

■「ありがとう、と言うたびに身が削られていく思いがする時がある」(岸田さん)

岸田:その時美香さんは、「自分も重度の障害がある娘をニューヨークで育てています。その経緯っていうのは語りきれないんですけど、本当にたくさんの人たちに助けられてきて、恩返しをしたくて今その要支援者の人たちをサポートする活動(「一般社団法人 未完の贈り物」)を続けているんです。今語学アカデミーの立ち上げもしようとしているので、協力させてもらえませんか」って。

 そう言われたときに、私もボルボを手で動かせるようにするために、ほんっとにたくさんの人に助けられた記憶が蘇って。そういった方々がいなければ、私だけでは実現できなかったんですよ。皆さんが、ちょっとずつ無理を聞いてくださった。なので、私の中にも、この人たちに恩返しをしたいという思いがすごくあったんです。

 美香さんが「子育てで本当に助けられたからあなたを助けたい」「私、恩返しをしたいんです」って言ってくださったのを聞いて、「この方は信じられる!」って思ったんですよ。

 というのも、ずっとずっと「ありがとう」って言い続けると、しんどくなるんです。言うたびに身が削られていくような気がする時がある。もちろん助けていただくのはすごくありがたいんですけど、100%助けてもらいっぱなしで、「ありがとう」って誰からも言われないと、貯金が減るのと一緒で、どんどん申し訳なくなってくるんですよ。生きててごめんなさいっていう感じがしてくる。

 多分、美香さんもそういう思いをされたことがあるんじゃないかなって。「ありがたさ」と「誰かを助けたい」って気持ちを同時に持っている人は、本当に本当に信じられる。だから、頼らせていただこうと決めたんです。

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