スポーツ

追悼・アントニオ猪木さん 秘蔵写真で振り返る稀代のヒーローが歩んだ道のり

アントニオ猪木さんの秘蔵写真で振り返る(写真/木村盛綱)

アントニオ猪木さんの秘蔵写真で振り返る(写真/木村盛綱)

 昭和プロレス界のスーパースター・アントニオ猪木さん(本名・猪木寛至)がこの世を去った。79歳だった。

 戦後、ブラジルで移民生活を送っていた時代に力道山に見出され、17歳でプロレスデビュー。1972年に自ら旗揚げした新日本プロレスではエースとして君臨し、ジャイアント馬場と並ぶプロレス界のヒーローとして、多くの名勝負を繰り広げた。

 ストロング小林との「禁断の日本人対決」、ボクシングの世界王者モハメド・アリ戦をはじめとする一連の異種格闘技戦、さらにアンドレ・ザ・ジャイアント、ハルク・ホーガン、スタン・ハンセンといった強豪外国人との対決は常に業界の話題を独占し、1980年代には日本列島に空前のプロレスブームが到来した。

 だが一方で、プロレスの地位向上、そして、市民権を取り戻すための、なりふりかまわぬ「激闘の時代」がそこにあった。プロレスはショーであり、その本質が純粋なスポーツ競技と一線を画すものであることは、今も昔も変わらぬ真実である。動かすことができないはずの「真実」を動かそうとした初めてのプロレスラーがアントニオ猪木だった。

 たとえ世間から「八百長」と蔑視されても、偏見に屈することなく自分自身の生きざまをリング上の戦いに投影してみせた。莫大な借金を負いながら、あえてリアルファイトで挑んだ「アリ戦」はその象徴である。

 観衆は、反骨と現状打破を打ち出す猪木の精神に激しく感情移入し、「猪木信者」と呼ばれる熱狂的なファン層も出現した。それほど、当時の猪木のプロレスには強烈な時代性が宿っていた。

 最晩年の猪木が、好んで揮毫した漢字は「道」である。この「道」はひとつの詩の標題ともなっており、1998年の引退試合でも紹介された。「危ぶむなかれ危ぶめば道はなし」「迷わず行けよ、行けば分かる」。それは猪木イズムを象徴する一節である。実は、この詩の原典は真宗大谷派の住職として知られた哲学者・清沢哲夫が、1951年に発表した作品「道」である。

 ときに苦しく、険しい道が続く人生において、迷いが生じたとき、人はどのような態度を取るべきなのか。清沢氏自身の実体験から生まれた普遍の輝きを持つその詩は、猪木氏の「発掘」により、再び光を放つこととなった。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン