国内

「撮り鉄」のマナー悪化問題 界隈での自浄作用が必要なのではないか

鉄道開業150年を記念して、イベントでにぎわうJR新橋駅前のSL広場(時事通信フォト)

鉄道開業150年を記念して、イベントでにぎわうJR新橋駅前のSL広場(時事通信フォト)

「鉄道が趣味なんです」というとき、かつては旅行が好きなのか、模型が好きなのかなど様々なものが連想されたものだ。ところが、インターネット、とくにSNSの普及によって、各地で騒動を起こす「撮り鉄」、鉄道写真を撮影する迷惑な人たちが真っ先に思い浮かべられるようになってしまった。鉄道開通150年の節目を迎えたいま、俳人で著作家の日野百草氏が、国鉄があった時代から鉄道写真を撮り続けているカメラマンに、現在の「撮り鉄」問題について聞いた。

 * * *
 その界隈では「全体の一部」「俺は違う」と思っていても、世間では「一部が全体」「お前もそうだ」とみなされることがある。

 いわゆる「撮り鉄」と呼ばれる、鉄道の写真を撮る界隈が、いままさにその状態に陥っている。鉄道開業150年だというのに残念な話、挙げればキリがないが、2022年に入っても報道沙汰になった事案が並ぶ。

 まず直近では10月、千葉県のJR「南流山駅」で廃止された寝台特急「カシオペア」の臨時列車を撮影しようとしてカメラの三脚を落とした「撮り鉄」の事案が報じられた。非常停止ボタンが押されて列車は停止、それでも一部の「撮り鉄」はこれ幸いと撮り続けたことに非難の声が上がった。

 8月には近鉄名古屋線で撮影のために前照灯を点けてほしいと「撮り鉄」が車内通報装置を押し、名古屋発津新町行きの急行列車を止める事案が発生した。車内通報装置は急病人や事故、事件のおそれがある際に使用するもので、個人的な趣味の撮影のために押していいものではない。

 6月には南海電鉄高野線そばの道路に大型の脚立を展開していた「撮り鉄」がSNSにさらされた。近年はこうしたSNSによる拡散で事案が明るみに出て、報じられるケースも目立つ。

 5月には東急目黒線(車両は埼玉高速鉄道)が遮断機によじ登っていた「撮り鉄」によって一時停止。踏切障害物検知装置の作動によるもので、これもSNSによって拡散されたものだった。

 4月にはJR「八王子駅」ホーム上で臨時急行「いわき」を撮影しようとした「撮り鉄」同士が狭いポジションに密集したあげくに一人が転落した。同月には東京メトロで脚立を使ってホームドアを越えて撮影しようとした「撮り鉄」が駅員に咎められたあげくに暴言を吐き散らして逃走する模様もまた動画で拡散、メディア各社で報じられた。

 その他にも島根県津和野町にあるJR山口線「本門前踏切」で、私有地への無断侵入や勝手な樹木伐採に地元民が「撮り鉄」のためにあえて一部を開放する措置をとった。この国はなんだかんだと言いながらも「撮り鉄」に優しいと思う。国によっては駅や電車の許可なき撮影など禁止はもちろん、防衛上の国家機密を脅かす、国民生活を乱す犯罪として連行される厳しい国もある。

関連記事

トピックス

次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン