「太宰治が訪れたという噂がある、大宮一老舗の酒屋だよ」(50代)と、常連客の一人が得意気に語るこの店のルーツは、大正末期に遡る。
「代々この地で酒屋をしてきましたが、親父の代のときには、スーパーみたいな業態だったこともありました。
太宰が来たっていうのは、親父が話してたんです。地域の調査をしているという人から『太宰治が人間失格を執筆していたときにこの界隈に住んでいて、うちの酒屋に来たことがある』って聞いたって。真相は定かではありません(笑)。
看板にある『銘酒肆』は、“めいしゅし”って読むんですけど、昔の言葉で酒を出す色っぽい店『銘酒屋(めいしゅや)』と酒を売る店『酒肆(しゅし)』をかけた造語です。親父が遊び心でつけたみたいです」(店主)
一の宮通りの外灯が消え、軒先の提灯がほんのりと辺りを照らすころ、店では、店主が奥から引っ張り出してきた古いアルバムを眺めながら、「みんな若かったね」と話が弾む
「仕事帰りにふらっと寄って、乾き物をつまみに、一杯やりながらここで出会った人たちと駄弁(だべ)るのが私の大切な時間です」(50代)
気の置けない仲間とのゆったりしたひとときに欠かせない酒は、『焼酎ハイボール』。
「飲み飽きない爽快な辛口。心地よく酔えて帰りがたくなるね」(60代)
2022年9月7日取材
■大西屋
【住所】埼玉県さいたま市大宮区大門町3−207
【電話番号】048-641-0703
【営業時間】18時ごろ~21時30分、日曜定休(祝日は不定)
焼酎ハイボール300円、ビール中びん450円、グリーン豆210円、ほたて塩焼き400円、酒粕漬けうずらの卵320円、えび黒こしょう200円
※営業時間等は店舗にお問い合わせください。撮影時はマスク、及び仕切りを外しています。