長嶋茂雄(右)と稲尾和久(写真/共同通信社)
稲尾と幾度も投げ合った元阪急の通算350勝投手・米田哲也が、当時の苦い思い出を語る。
「あの時代ではサイちゃん(稲尾)がナンバーワンだろうね。低めにコントロールされたスライダーは凄かった。サイちゃんが西鉄に入団してからチームが強くなり、1人のピッチャーの加入で優勝できるチームになった。まさにエースと呼ぶにふさわしいと思います。
当時はサイちゃんと投げ合いたくないというので、西鉄戦の前になると体調を崩すピッチャーがゴロゴロいて、最後にお鉢が回ってくるのが私だった。そのため西鉄との対戦成績が1勝6敗というシーズンもあって、その1勝も私のサヨナラホームランだった(苦笑)」
投手の分業制が確立された現代野球において、稲尾のような先発完投型は少なくなったが、昨年のシリーズ第6戦で“志願の9回続投”という気迫を見せた山本は数少ない稲尾の系譜を継ぐ投手と言えるかもしれない。
(第3回につづく。第1回から読む)
※週刊ポスト2022年11月4日号