宮沢喜一内閣(1991~1993年/時事通信フォト)

宮沢喜一内閣(1991~1993年/時事通信フォト)

最大派閥の分裂が火種に

 最大派閥に振り回されているという面では宮沢喜一内閣(1991~1993年)とも共通点が多い。

 宮沢首相は海部退陣の後、当時の自民党最大派閥・竹下派の支持を受けて登板した。だが、竹下派会長の金丸氏が巨額脱税事件で失脚すると派閥が分裂。自民党分裂に発展し、宮沢内閣は総選挙で過半数割れして退陣に追い込まれた。

 岸田首相も最大派閥・安倍派の支持で首相になったが、その安倍派は会長の安倍氏の死後、旧統一教会問題が噴き出して派閥はガタガタ、後継者をめぐって分裂含みの状況にあり、政権基盤が大きく揺らいでいる。

「岸田内閣は竹下登内閣(1987~1989年)と似ている」と指摘するのはジャーナリストの田中良紹氏だ。

「現在の自民党の旧統一教会問題を見ると、最も類似しているのが竹下内閣のリクルート事件と言われています。政界への未公開株提供問題が明らかになった後も、竹下首相をはじめ次から次へと未公開株を貰った自民党政治家の名前が明らかになっていった。旧統一教会との関係が次々に明らかになっているのと同じ状況です。閣僚の名前がゾロゾロと出てきた部分も同じ。国民の怒りは竹下政権にぶつけられ、支持率は一桁に。消費税率と同じだと揶揄された。

 その後、野党の抵抗で予算審議が難航し、4月に入っても予算成立のメドが立たない異常事態となった。5月に来日予定だった海外の賓客の接遇予算もない。そこに竹下首相の金庫番秘書が自殺し、竹下氏は予算成立と引き換えに退陣した」

 短命政権に共通するのは、支持率カーブが急激に落ち込むことだ。

 最も下がり方が大きかったのは鳩山由紀夫内閣(2009~2010年)。国民の期待を受けて登場した時は支持率70%台だったが、朝令暮改を繰り返し、鳩山首相が沖縄米軍基地移設をめぐって「最低でも県外」という公約を断念し、就任9か月後に退陣する時は20%まで下がった。

 岸田内閣の支持率も今年7月の安倍氏の銃撃事件後、毎月10ポイント超ずつ下がっており、下落カーブは鳩山内閣と重なる。

「岸田さんも朝令暮改が目立つ。旧統一教会への対応をはじめ、コロナ感染の全数把握見直しもやると言いながらリーダーシップが執れず、佐渡金山の世界遺産申請も迷走。岸田さんの場合は、キャッチフレーズである『聞く力』を発揮して何でも聞いてしまい、それで前言撤回が増えている。いずれにしても公約をコロコロ断念、変更していくことで国民や与党の信頼を失っていることは間違いない」(有馬氏)

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