ヤクルトとの白熱した日本シリーズを制したオリックス。黄金時代の構築へ、FA市場も積極的に調査を進めているという。在阪スポーツ紙デスクは、こう分析する。
「リーグ連覇を飾り、脂の乗り切った選手が多いですが、補強ポイントは打線ですね。今年の89本塁打はリーグワースト。杉本裕太郎の打撃不振が誤算だった。日本シリーズは第6戦こそその杉本が決勝打を放ったものの、吉田正尚に依存する打線になっているのは明らか。吉田正はポスティングシステムでメジャー挑戦する可能性もあり、クリーンアップを打てる強打者はのどから手が出るほど欲しい。西武・森友哉、日本ハム・近藤健介がFA権を行使した場合、獲得に動く可能性があります」
ポジション別でみると、左翼と指名打者での出場が多い吉田正、三塁・宗佑磨、遊撃・紅林弘太郎、右翼・杉本裕太郎、中堅・福田周平、一塁と外野を守る中川圭太の6人が今季規定打席に到達した。現状で空いているポジションは外野の一角と一塁。左翼の近藤健介は吉田正とポジションが重なるが、どちらかが指名打者に回ることで併用できる。
問題は森を獲得した場合の起用法だ。捕手は伏見寅威、若月健矢が投手との相性などを考慮して起用されてきた。伏見はチームトップの76試合にスタメン出場。6月下旬に左大腿直筋の筋損傷で1か月以上戦線離脱した影響もあり、打率.229、3本塁打、21打点とふるわなかったが、巧みなリードで投手陣を引っ張った。一方、かつての正捕手・若月も負けていない。課題とされていた打撃で打率.281、4本塁打をマーク。追い込まれても逆方向にはじき返すなど粘り強くなり、勝負強い打撃で得点圏打率.371を記録した。
オリックスを取材するスポーツ紙記者は、「リーグ連覇の功労者は伏見と若月です」と断言する。
「伏見は左投手の良さを引き出すリードに定評があり、宮城大弥、山崎福也から絶大な信頼を寄せられている。若月は絶対的エース・山本由伸の登板機会でマスクをかぶる機会が多く、縁の下の力持ちとして山本の2年連続『投手5冠』をアシストした。森がFA移籍すると、この捕手陣のバランスが崩れる。強打が持ち味の選手なので指名打者での起用も当然ありますが、基本的に捕手での起用になるでしょう。そうなると、伏見と若月の出場機会が減ることになる。バッテリーを組んでいた投手たちも森と相性が合うか不透明な部分がある。素晴らしい選手であることは間違いないですが、今のオリックスに必要な選手なのか疑問符が付きます。基本的にはバッテリーを中心とした守りのチームなので、若月と伏見の扱いは大事にしたほうがいい」