入院していた病室
「大丈夫です。どんな診断をされても必ず治療法がありますから」
これは手術前に不安で落ち込んでいた私に、看護師さんがかけてくれた言葉だ。
そして退院して3週間後。身を引き締めて診察室に行き、最終診断を受けた。
「よかったです。がん細胞は見つからず境界悪性のままでした。だけど、境界悪性でも手術中に卵巣の壁が破れたので、診断は『境界悪性のステージIC』になりました」
そして、これからは「経過観察」で、10年にわたって検査を受け続ける必要があるという。
もし、もっと早く検診を受けて、こんなに大ごとになる前に卵巣の異変に気づいていたら……と思う。
でも、ものは考えようで一病息災というではないか。1つだけでも体に気がかりがあった方が、私のような臆病で面倒くさがりな人間にはかえってよかったのかもしれない。
それからもう1つ、今回の入院でわかったことがある。
それは私が思っていたよりずっと弱い人間だということだ。
「すごく大変そうでしたけど、お元気になってよかった。いまの野原さんの方を記憶しておきます」
退院間近になったとき、同室の人が満面の笑みでそうおっしゃったのよ。カーテン越しに、私が痛みで呻き、弱音を吐いて看護師さんに励ましてもらっていた声が丸聞こえだったのよ。
そんな弱い自分をちゃんと認めると同時に、人の弱さに敏感なやさしい老女になろう。そう思ったのでした。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/空中ブランコや富士登山などの体当たり取材でおなじみ。昨夏から故郷・茨城で母を在宅で介護し、今春、看取った。
※女性セブン2022年12月1日号
退院当日の朝食。12日間の入院中、22食の病院食を食した。食事制限のない女性外科の食事はボリュームがあって、かつ美味。
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