ライフ

最古の駅舎が残る鉄道の町・滋賀長浜 D51の汽笛を再び鳴らしてみたら

現存する最古の駅舎・長浜駅は乗降場としての役割を終え、現在は長浜鉄道スクエアとして活用されている(撮影:小川裕夫)

現存する最古の駅舎・長浜駅は乗降場としての役割を終え、現在は長浜鉄道スクエアとして活用されている(撮影:小川裕夫)

 2022年に日本の鉄道は開業150年を迎えた。記念すべき年にあたる。そのため、鉄道記念日となる10月14日前後には、全国各地で記念式典やイベントが挙行されたり、鉄道の歴史を振り返る様々な試みが行われている。ライターの小川裕夫氏が、現存する最古の駅舎がある長浜市で、D51の汽笛を再び動かす試みについてレポートする。

 * * *
 滋賀県長浜市に所在する旧長浜駅舎は1882年に完成した。現在、乗降場としての役割は果たしていないが、完成当時は東海道本線の駅舎として使用されていた時期もある。そして、役目を終えた後も保存されたため、現存する最古の駅舎として活用されている。乗降場の役割を引き継いだ現・長浜駅は現在、北陸本線の列車のみが発着し、東海道本線の列車は走っていない。

 1889年4月、神奈川県の国府津駅と静岡県の浜松駅とを結ぶ線路が完成。これにより、新橋駅―神戸駅間の線路が一本で結ばれ、現在の東海道本線の前身となった。そしてこのとき初めて、新橋駅から直通列車で長浜駅へ行けるようになった。

 東西両都を結ぶ東海道本線は名実ともに我が国の大動脈となったわけだが、開業時の東海道本線は微妙に現在とは異なるルートを走っている。明治期の蒸気機関車は性能不足で、急峻な山岳地帯や勾配のきつい坂を上り下りできなかった。また、土木技術も未発達で、長大なトンネルを掘削することは難しかった。こうした理由もあり、当時の線路はそれらを避けて建設されていった。

 東海道本線は、難所として知られる関が原―米原間を迂回するルートで建設された。それまでの東海道本線は関が原駅を出た後、深谷(ふかたに)駅(滋賀県米原市、現在は廃止)を経て長浜駅へと線路が続いていた。長浜は琵琶湖の東岸に位置し、東海道本線が全通するまでは滋賀県の大津とを結ぶ鉄道連絡船も就航していた。そうした理由から、長浜は物流の要衝地として栄えていた。東海道本線が長浜経由で建設されたのは物流拠点として重要な役割を果たしていた、という理由も少なからずある。

 しかし、車両の性能や土木技術が向上すると、迂回ルートで線路を建設する必要がなくなる。むしろ迂回ルートは所要時間が長くなってしまうので、それらを短縮するべく新たなルートで線路を建設し直すこともあった。

 1889年7月に東海道本線はルートを変更。新たに関が原駅―米原駅に線路が建設され、長浜駅から東海道本線の旅客列車は姿を消した。旅客列車は発着しなくなったが、長浜駅は日本海側の主要都市だった福井県の敦賀とを結んでいたこともあり、引き続き東海道本線の貨物列車が発着していた。

 ちなみに、東海道本線という路線名が正式に制定されたのは1895年で、その翌年に長浜駅へと走る東海道本線の貨物列車は休止する。

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン