万引き犯の多くは窃盗への依存症を患っていると言われている(イメージ、dpa/時事通信フォト)

万引き犯の多くは窃盗への依存症を患っていると言われている(イメージ、dpa/時事通信フォト)

「やばい感覚になってくのが自分でもわかるんですよ。そういうのに向いてる人もいるんでしょうけど、今考えればただのスーパーの非正規に監視まで求めるのは酷だと思います」

 先にも書いたが、他人を監視するというのは本当に難しい仕事で、その道のプロである警察官や刑務官すら、ときに誤ることがある。

「もう精神的には開放されましたけど、駅のコンビニとか完全にセルフレジになっていて驚きました。私と同じような立場で一人だけ店員がいましたが、大変だなあと思います」

 かつては少額精算によるレジの効率化だったはずが、システムの高度化により人手不足の解消どころか人員削減を期待されることとなってしまったセルフレジ、人件費削減のつもりが店員の仕事が増え、万引き犯の餌食となって損害を出すことになるとは。もちろん、諸悪の根源は万引きというふざけた名称であまやかされ続けた窃盗犯だが。

「ほとんど厳重注意でおしまいです。また店に来ます。ずっと刑務所ってわけにもいかないんでしょうが、もう少し罰則を強めて欲しいです。うちの副店長のほうがよっぽど怖いし厳しいです。対応含め警察のほうが優しいなんて」

 そのほとんどは厳重注意か、そうでなくとも不起訴である。先の元陸上選手も7回逮捕されたにも関わらず執行猶予だった。2000年代のはじめ頃までは、若い時代のやんちゃ自慢として万引きどころか「集団強盗」(当時の番組内テロップに拠る)で店を潰したことを面白おかしく語る芸能人がいた。また、それを「ネタ」として平気で放送するテレビ局と制作スタッフがいた現実がある。なぜか店舗の万引きという窃盗にだけは甘かった日本。

「さっきも話しましたけど、再起のチャンスとか病気とか、店にとってはどうでもいい話なんですよ。1個盗まれたらその1個分を回収するためにどれだけの数を売らなければいけないか、日本は本当に万引きに甘いと思います。警察は被害の側なんてどうでもいいんですかね、それで病むオーナーや店長だっているのに」

 強い言葉となったが被害者の側としては当然だろう。現実問題として店舗の対応に限界がある以上、れっきとした窃盗罪なのだから警察の対応も厳しくすべきではないか。万引き犯ばかり甘やかされ、何も悪くないはずの店側や店員ばかりが対応を迫られ続ける。本当にかわいそうだ。

 セルフレジの普及とともに再び顕在化したこの問題、いかに盗まれないか、未チェックを防ぐかのレジシステムにおける技術面での進化はもちろん、日本人の「万引きという名の窃盗」に対する意識もアップデートしなければ解決も、セルフレジのよりいっそうの普及も難しいように思う。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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