ビジネス

元セルフレジ案内係の告白「他人を見張ることが辛くなって辞めました」

省人化のためセルフレジの導入がすすむが、トラブル対応で店員がつききりになることも(イメージ、Avalon/時事通信フォト)

省人化のためセルフレジの導入がすすむが、トラブル対応で店員がつききりになることも(イメージ、Avalon/時事通信フォト)

 2021年の万引き認知件数は8万6237件、検挙人数は5万369人(警察庁「令和3年の刑法犯に関する統計資料」調べ)。十年以上、減少傾向が続いているとはいうものの、いまも毎日、200件以上の万引き事件が発生している。近年ではセルフレジの導入もあり、その対応に店側の悩みは尽きない。俳人で著作家の日野百草氏が、連日、万引きに苛まれた元スーパーのセルフレジ案内係に、被害店舗の苦しみを聞いた。

 * * *
「最初は『悪い奴を捕まえてやる』なんて意気込んでましたけど、いろいろあって辛くなってきて、店の雰囲気も悪いんで辞めました」

 大手グループ傘下の中堅スーパーマーケットで数年間、準社員をしていた20代男性。現在はコンビニエンスストアでアルバイトをしながら資格取得の勉強をしていると話すが、彼は数ヶ月前までスーパーに大量導入されたセルフレジの案内係兼「見張り」を担当していた。

「うちは万年人手不足だからセルフレジを導入したと思ったのに、逆に一部のパートやアルバイトを減らしました。持ち場の変更も結構あって、私は品出しや陳列といった普段の仕事と同時に、セルフレジでお客様の荷物を運ぶとか、無人レジの使い方の説明とかのサポートをすることになりました」

 セルフレジ(無人レジ、とも)とは聞こえがいいが、現実には多くの店舗が完全なセルフにも無人にもできない。使い方がわからなかったりとか、お客が間違ってエラーを起こしたりは頻繁に起きると話す。

「でもスーパーで働いていれば、無人レジに限らずそういうのは普通です。無人レジで一番怖いのは、やはり『かご抜け』と故意の『スキャン漏れ』です」

 かご抜け、とは精算せずに店の買い物かごで持ち帰ってしまう古典的な万引き(この「万引き」という言葉は「いじめ」と同様に嫌いだが便宜上使う)の手口で、スキャン漏れ、とはバーコードを読み取らずに持ち帰る行為である。いずれも窃盗罪であり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。

「レジの仕組みは詳しく話せませんが、監視カメラはもちろん、重量感知器で識別できるようになっています。でも実際は故意、うっかり関係なく(商品の未精算は)一定数出てしまいますね」

 盗もうと思えば盗めてしまうのがセルフレジの問題点だ。

「以前はポケットに入れたりバッグに入れたりでしたが、いまではセルフレジまで普通に商品を持ってきて、そのまま一部だけ払ったふりでスルーして行きますからね。ビニール袋の有料化でそのままバッグに入れるのも普通になりましたから、見極めが難しくなりました。それに盗む連中は金持ってるのにしれっとやります」

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン