「弾け」ではなく「行け」と言われたので準備できるものが限られた(イメージ)

「弾け」ではなく「行け」と言われたので準備できるものが限られた(イメージ)

「さすがにそれはやめておけ」

 行きつけの店などでは狙いやすい所もあるが、その分、人目につきやすくなる。そのためA氏には、この時、事務所と自宅以外の選択肢が見つからなかった。組長が「闇でやれ」と命じていたからである。

 闇でやれとは、襲撃したのが自分たちだとわからないようにやれという意味であり、襲撃場所は限られていく。行動確認を行ったところで、A氏らが闇で襲撃を決行できる場所は他になかった。

「こうなれば相手の事務所の前に車を止めて、バタバタと走って行くしかない。拳銃を使えればよかったが、組長に『弾け!』ではなく、『行け』と言われていたので銃は使えなかった」(A氏)

 不穏な空気が組織内に流れている最中、某組の事務所前では組員が警戒していた。そこに突っ込むのだ。うまく逃げ切れるかわからない。だが行くしかない。A氏は決断する。組長のイラ立ちが見えたからである。

「今夜、決行します。やる場所がないんですが、いいですね」

 その言葉に組長がA氏を見た。

「事務所から出てきた所が一方通行なので、そこでやります」」

 事務所の手前、一方通行の道路に車を止め、運転手役の組員を待たせて、自分が行くとA氏は伝えた。

「そりゃまずいな。わからんようにできんのか」

 ところが組長はそう答えた。

「できませんよ。1人でやることはできないし、車に運転手は必要で」
「そうか…」

 組長は考え込んだ。

「さすがにそれはやめておけ」

 妙な緊張感と安堵がA氏の胸に広がった。

 組長のこの一言で襲撃は取りやめとなり、この話はそれ以上、進まなかった。

「自分たちが襲ったとわかれば、勢力争いは激化し、表立って対立することになる。襲ったところで、組長にとって金にならない話だったこともある」とA氏はいう。

「それはやめておけ」、組長にそう言われて初めてやめることができる。そう言われなければやめることはできない。また、やろうとしてもやめろと言われれば、やることはできなくなる。それが極道の世界でもある。

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