ライフ

“夢の認知症薬”レカネマブ、治験で「投与後2人死亡」のなぜ 認知症学会理事長が語る

治験結果の研究に関わった日本認知症学会理事長で東京大学大学院教授の岩坪威氏(写真/共同通信社)

研究に関わった日本認知症学会理事長で東大大学院教授の岩坪威氏(写真/共同通信社)

 ついに“夢の認知症薬”誕生となるか。エーザイは米バイオジェンと共同で開発するアルツハイマー型認知症薬「レカネマブ」について「効果があった」と発表。2023年中の承認を目指すとした。だが、一方で気になる問題も浮上している。

 新薬の効果が確認された最終段階の治験データが、11月29日のアルツハイマー病臨床試験学会で発表された。

 それによると、日本や欧米の軽度認知症患者ら1795人を対象にした治験で、レカネマブを投与したグループは、偽薬群に比べて症状悪化が27%抑えられたという。

 同薬は従来の認知症薬とは仕組みが異なり、アルツハイマー病の根本治療につながるとされる“夢の認知症薬”だ。先行薬「アデュカヌマブ」が昨年承認見送りとなったことで、新薬への期待が一層高まっている。

 ただ学会では、成果とともに、治験終了後に継続して同薬が投与された1608人のうち2人が脳出血を生じ、死亡したことが報告された。

 エーザイは死亡した2人は重大な合併症があり、血栓・塞栓の予防に使われる抗凝固薬や脳梗塞の治療に使われる血栓溶解薬を併用していたため、「死亡はレカネマブに起因するものではない」と発表したが、2人の死亡は本当に関係ないのか。

 死亡例は、2人とも「脳出血」が原因とされる。レカネマブは脳内でアルツハイマー病の原因物質とされる「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質を除去する働きをするが、一方で血液をサラサラにする効果が指摘されており、「抗凝固薬の効果を増強するのでは?」と不安の声が挙がっている。

軽視はできない

 治験結果の研究に関わった日本認知症学会理事長で東京大学大学院教授の岩坪威氏が解説する。

「今回、レカネマブを投与して亡くなった2例のうち1例目は、不整脈のために抗凝固薬を投与中に脳出血を併発し、その後『心筋梗塞』で死亡したことが判明しました。

 2例目は脳梗塞で血栓溶解薬を緊急使用し、『脳出血』が生じて死亡しています。これが脳梗塞による浮腫等の影響なのか、レカネマブでアミロイドが除去されて脆弱になった血管から出血したのか、現時点では不明です」

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン