つまり「脳出血」とされた1例目だが、実は死因は心筋梗塞だった。だが岩坪教授は「死亡例は1例といえども軽視はできない」という。
「治験で実薬投与を受けたうちの140人が抗凝固薬の投与を受けており、そのうち5人に脳出血が見られました。全般的には安全性はよく保たれたと考えますが、レカネマブが出血に関与した可能性は否定できないため、将来的には血栓溶解薬の使用を避けることは推奨される可能性もあります。しかし、抗凝固薬の併用については、必要な患者さんへの投薬機会を奪わないためにも、今後の長期観察が重要です」
リスクを十分に勘案しながらも、岩坪教授は新薬の効果にこう期待する。
「適正な使用法が定まり、専門医が慎重に扱えば、アルツハイマー病初期段階の進行が抑制できる治療法になると見ています」
各国で2023年中の承認を目指すレカネマブ。審査の行方に注目が集まる。
※週刊ポスト2022年12月23日号