角田裕毅選手。来年、フォーミュラE王者にも輝いたニック・デ・フリースとタグを組むことになる(dpa/時事通信フォト、2022年アブダビ)
「速さ」はあるが、角田裕毅選手に足りないもの
──その頂点のF1に、2019年から角田裕毅選手が参戦しています。国内はもとより海外でも人気のレーサーに成長していますが、角田選手をどう見ていますか?
来年が勝負でしょうね。来年からチームメイトとなるニック・デ・フリースはめちゃくちゃいいドライバーだから、厳しい戦いになると思いますけど、頑張ってほしい。
──アルファタウリのチーム代表のトストさんはじめ、角田選手に「速さ」はあると、皆さん仰っています。では、足りないものはなんでしょうか?
彼は速さもあるし、フィジカルも鍛えて強くなったし、アグレッシブでやんちゃなキャラクターもいいですよね。でも、まだ足りないところはあって、一言で言えば、考え方かな。ゴールを設定して、そこから逆算して、今は何をすればいいかを考え、実行していくという考え方です。チャンピオンになりたい、勝ちたいと口では言うんだけど、だったらそのゴールに向けて、一年目、二年目の「今」は何をしなければいけないのか、というところが明確になっていないような気がします。
僕は仕事では必ずゴールを設定するんです。それを達成するために逆算して、今の行動を決めていく。やっぱり目の前のレースをやみくもに戦うだけではダメですよね。去年は毎戦、僕もサーキットにいたから、そういう話をしょっちゅう角田選手としていたんですが。
──山本さんは他にも、F2に参戦中の岩佐歩夢選手のサポートもされています。一般論として、日本人ドライバーが勝つために必要なことは何でしょうか?
岩佐選手もF1を目指してすごく頑張っています。日本人が勝つには、一つには周りのサポート体制が必要なのと、それから海外への適応力ですね。衣食住、何でも食べられてどこでも快適に暮らせる生活力と、それから英語力。マルコさんの言葉を借りると「適切な英語」「正しい英語力」です。以前、名取鉄平選手と角田選手が、同時期にF3で走っていましたが、僕からみて二人の差は、ほとんど英語力だけだったと思います。英語について角田選手は、「インターナショナルスクールに通わせてくれていた親に感謝です」と言っていたけど、もちろん彼自身も努力しただろうし、今も英会話のレッスンをやっていますよ。