刷り見本を色校正専用ライトの下でルーペを使ってチェック
最も神経を使う作業は「校正」
デザイン上では厳格なルールが数々存在する。最も大きい制約は、年賀はがきでは赤一色しか使えないことだ。そして、料額部分の上下に赤い線を必ず入れなければいけない。これは郵便物を機械に流して処理するための不動のルールだという。
各デザイナーから提出された案はコンペ、切手等発行会議を経て、2022年3月に正式決定した。無地はがきなどに使われる5種類は4人のデザイナーが手掛けたものが採用された。4月から印刷を順次開始し、8月末に2023年用年賀はがきのデザインを報道発表。9月に印刷が終了し、11月に一般発売が開始した。
デザインの決定から印刷までの間にも様々な工程がある。最も神経を使う作業の1つが印刷前の「校正」。年賀はがきの校正紙を「タトウ」と呼ばれる専用台紙に置き、番号枠など各パーツの寸法、印刷位置のずれがないかを確認するとともに、色の校正も厳重に行なう。
日本郵便本社内の一角にある校正室には、色校正専用ライトが設置されている。
「正しい色評価ができる照明です。この部屋で全ての切手、はがきの校正を行ないます。年賀はがきもこの照明とルーペで確認します。2018年に本社が霞が関から現在の大手町のビルに引っ越しをする際、『これは校正室にないといけないんだ!』と訴えて取り付けた思い出があります。霞が関から持ってきました」(丸山さん)
色校正専用ライトの下で、印刷会社の担当者が持参する刷り見本を小さなルーペを使ってチェック。この校正作業にはデザイナー、事務方、印刷会社の担当者が同席して臨む。大量の印刷の大元の版となる校了品はその後、年賀はがきに携わる社内の管理責任者全員に回覧され、デザイナーが最終チェックをして、ようやく印刷へと進む。