なぜ落ちる夢を見る?(写真/GettyImages)
過去の経験がつなぎ合わせて夢になる
好きでもない人と恋に落ちる夢を見て、それから相手を意識してしまうのも「あるある」だろう。しかし、これは脳が「連想ゲーム」のように、わずかな共通点をつないで次々と夢を発生させている過程のひとつではないかと考えられる。つまり、脳が偶然組み合わせた物語なだけ。
「亡くなった祖父母や父母が登場する夢もよくあります。たとえばお墓参りがフックになって小さい頃の生活体験を思い出すなど、なんらかの体験がもとになって夢に出てくることが多いのです」(松田さん・以下同)
ストーリーが破綻している荒唐無稽な夢も珍しくない。これはどうして見るのか。
「夢はまったくのゼロから生み出されることはなく、過去の記憶という材料の組み合わせで作られます。その記憶は自分自身が認識しているものだけでなく、すれ違っただけの人など、無意識のうちに見ている情報も加わって組み立てられます」
だからこそ、見たことがないと思う物や人、ストーリーが登場するのだ。
女性の方がよく夢を見る理由
夢をよく見る人もいれば、ほとんど見ない人もいる。その差は何なのか。福田さんが説明する。
「世界の研究論文を見渡すと、女性の方が夢をよく見るようです。とはいえ、レム睡眠中に起こすと、性別に関係なく8割くらいの割合で夢を見たと話します。つまり、本当は誰もが夢を見ているのに、特に男性はそのことを覚えていないケースが多いのだと考えられます。
ドイツのシュレッドルという研究者は、夢を見るファクターは2つあるとしています。1つは“中途覚醒が多いかどうか”。レム睡眠のときに目覚めれば覚えていることが多くなるのです。
もう1つは、“夢に興味があるかどうか”。女性の方がより夢に興味を持っているということも知られています」
松田さんが続ける。
「誰もが一晩に3〜4つの夢を見ていますが、覚えているのは最後に見た夢の一部だけというのが一般的。とはいえ、個人差も大きく“一晩で5つの夢を見た”と詳細を報告できる人もいます。インパクトがあったり、感情が高ぶったりすると夢が記憶に残りやすいのです」
強い願望が夢に出ることも
では、自分が見る夢に理由はあるのか。「夢占い」などでは未来を暗示したり、無意識のうちの願望や啓示が含まれるともいわれるが、いったいどうなのか。
「フロイトの『夢判断』のように、無意識下にある願望や不安の表れではないかと考える人も多いのですが、それは科学的には証明されていません。もちろん何かの予言や予兆ということもあり得ません」(福田さん)
また、夢に知らない人が出てくるのは、知人以外にも、ドラマや映画、漫画などで見た記憶を脳が組み合わせ、架空の人を作り出しているから。何年も前の、普段は忘れている記憶もパーツとして加わるので、なんとなく啓示のように思えてしまうのだ。松田さんもこう補足する。