朝7時に池袋集合、撮影は12時以降も続く過酷な現場
IWGPは2000年の作品「もう23年も前になるのか」
G-Boysのメンバーは毎朝、池袋に集合し1日中撮影していたため、仲間意識が強くなった。撮影が深夜に及び、翌日、早朝集合というときには帰宅しないこともあった。
「朝7時集合、夜は12時回るのは当たり前でしたから本当に過酷な現場で、夜中に撮影が終わって、G-Boysで食事しに行ったら、帰宅してももうあまり寝る時間がない。だから、早朝から動き出す山手線に乗って3周くらいして仮眠をとり、それから池袋駅で降りて現場に入ったりしていました。若かったからできたんですね。過酷だけど楽しかったです。『ドラマの撮影ってこんなに大変なんだ』と思っていたら、その後、いろんな現場を経験しても、『IWGP』が一番過酷でした(笑)」
窪塚がG-Boysのメンバーを自宅に招待してくれたこともあったという。
「撮影が終わった後に、『おいでよ』という感じで。広くて綺麗なマンションでしたよ。部屋の壁が白くて大きくて、そこをスクリーンに見立ててプロジェクターで洋画を映し出し、みんなで観た記憶があります。G-Boysのみんなとはしばらくはよく会っていましたが、今はもうさすがに連絡をとっていませんね」
実は、現場で脇さんが一番、親しく話をしたのは坂口憲二だ。
「坂口さんのお父さんは、“世界の荒鷲”といわれる有名なプロレスラーの坂口征二さんじゃないですか。僕はプロレスが大好きなので、プロレスの話でめちゃめちゃ盛り上がりました。僕が一番印象深いのも坂口さんとのシーンで、僕がナイフでお尻を刺されるシーン。もちろん刺されたことなんてないから、どういう芝居をすればいいかわからなくて、『刺されてすぐイテーってなるかな』『ちょっとたってから痛みがくるんじゃないか』『少し歩けてもいいんじゃないか』などと2人で話し合って演じました」
思い描いていたイメージと違ったのは、警官役の阿部サダヲだ。
「阿部サダヲさんは明るくてコミカルなイメージがあったんですけど、物静かで何もしゃべらないので、ギャップに驚きました。現場ではちょこんと目立たないように座っていて、朝、『おはようございます』と挨拶しても低いテンションだし。でも、本番に入った瞬間、ブワッとぶっ飛ぶんですよね」
23年前の撮影は、驚きのエピソードに溢れていた。
(後編に続く)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫