国内

【人生を沖縄ジャズにのせて】「明日、ベトナムへ行く」泣きながら踊っていた米兵

美しいシンガーとして米兵からも人気だった(写真は東山さん提供

美しいシンガーとして米兵からも人気だった(写真は東山盛さん提供)

 アメリカと日本の音楽文化が、独特の風土と歴史のなかで混ざり合って生まれた「沖縄(ウチナー)ジャズ」。今年、米寿を迎える“石垣島のオバー”こと齋藤悌子さんは、ウチナージャズと人生の苦楽を共にしてきた現役ジャズシンガー、昨年は“デビューアルバム”も制作した。そんな齋藤さんの歩みを振り返る。沖縄という土地柄ゆえ、米軍との関係も深いという。

【全4回の第3回。第1回から読む】

 * * *
 那覇の高校に進学した齋藤さんに、歌を仕事にすることをすすめたのは学校の教師だった。

「当時から歌うことが好きで、学芸会で独唱したこともありました。あるとき、先生から『悌ちゃん、あなた社会に出たら音楽の道に進んだら?』と言われて、基地でシンガーのオーディションを受けることになったんです。当時はクラシックしか歌えなかったので、試験では(シャルル・)グノーの『アヴェ・マリア』を伴奏なしで歌いました」(齋藤さん)

 1972年の本土復帰まで、アメリカ軍の直接統治下に置かれた沖縄は政治経済、法制度や文化などあらゆる面で本土と切り離された状態が続いた。内地から沖縄に行くにはパスポートが必要で、通貨はドル。街中に英語があふれ、自動車は右側通行だった。

 27年間に及ぶ米軍統治下の時代を沖縄の人は「アメリカ世(ゆ)」と呼ぶ。ラジオからリアルタイムでアメリカのヒット曲が流れ、米軍基地で日本人のバンドマンが演奏していた沖縄では、ジャズもアメリカや日本とは違った独特の文化が形成されていったという。齋藤さんが続ける。

「実はオーディションで私をスカウトしてくれたのが、後に結婚する夫なんです。夫はギタリストで、バンドマスターでした。あのときの私は横文字の歌はあまりわからなかったけど、クラシックを歌えたから何とかなると思ったんでしょうね(笑い)。英語もほとんどできなかったので、曲は耳で覚えて、歌詞は何度もノートに書き写しました。憧れだった歌の世界に入ることができたので、勉強は苦じゃなかったです。

 もう忘れてしまった曲もあるけど、好きな歌はずっと覚えているし、いまも400曲くらいは歌えるんじゃないかな。歌詞を書いたノートや兵隊さんが書いてくれたリクエストカードは捨てられずに取ってあります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン