息もきらさずに歌って踊る。
まず、オリコン1位を獲得したファーストソロアルバム『20200101』の曲から熱唱。ラップやダンスなど切れ味も鋭く、1万人の目線は香取にくぎ付けに。
はじけるような笑顔で、「ハロー、東京!」と叫び、一気呵成に6曲を歌った。曲ごとに表情をガラリと変え、ダンサーチーム「SNG DANCERS」とともに、華麗なパフォーマンスで観客を香取が生み出すライブの世界に引き込んでいく。
曲もポップ、ジャズ、ロック、ヒップホップ、ソウル、テクノ、歌謡曲……数々の要素を含んでいることがわかる。香取の曲を知らなくても、圧倒的に楽しく、体が動き出す。会場には「みんな、仲間だよ!」というエネルギーがすみずみまでいきわたっていく。
これが、アイドルとして走り続けてきた彼の圧倒的な力だ。会場にいる誰一人として置いて行かないのだ。スタンドマイクを使った力強いヴォーカルもあり、歌手としての香取の底力を感じた。
水も飲まず、息もつかず6曲を全力疾走した香取に、ファンたちは万雷の拍手を送る。曲の間は軽々と歌っているように見えたが、MCに入ると肩で息をしており、なかなか整わない。それでも時間を惜しむかのように「ようこそ!」と声をかける。
なかなか落ち着かない呼吸に会場からは笑い声が。すると香取は「みんな笑っているけれど、久々のスタンディング(ライブ)で、みんな同じでしょ?」と話しかけ、その親しみあふれることばに、会場は笑いと一体感に包まれた。会場全体と目線を合わせる。このときに、観客全体の手がつながれて輪になったことを感じた。
「楽しい! 最高! こんな大きなところでライブする日が来るとは……」と、感無量といった様子で語りかける。長引くコロナ禍、ここにくるまでの香取のキャリアと人生……成功までの努力や理不尽との戦いなど、さまざまな経験を乗り越えてきた重みが伝わって来た。
そう、氷河期世代の私達は彼とともに成長してきた。彼の笑顔に元気をもらうだけでなく、自分を投影し、鼓舞し続けててきた。
大河ドラマ『新選組!』(2004年)で初主演したこと、“慎吾ママ”のキャラで老若男女をとりこにしたこと、2021年に紺綬褒章を受勲したこと……常に自らを超えていく香取の姿を見ながら、社会で生き延びる気力を得ていた人も多いはずだ。
このアリーナコンサートは、香取がソロになってからの、ひとつの大きな目標だったのだ。それを達成した瞬間、同じ空間にいて彼を応援していることに、腹の底から気力がわいてきた。
有明アリーナでは、2022年8月24日に、稲垣吾郎・草なぎ剛とともに「東京2020パラリンピック1周年記念イベント」にIPC特別親善大使として参加した。
ライブの中盤は50年代アメリカを思わせる、大人の雰囲気に。ジャズ要素が強いセカンドアルバム『東京SNG』の曲をメインに、タキシードを着た香取が熱唱。
華麗な演奏は「SNG BAND」のメンバーたち。きらめくような音が、香取ののびやかで表情豊か、そしてカラフルな歌声とシンクロしている。1万人規模のアリーナでありながら、どこかのジャズクラブにいるような親密さもあり、音楽そのものを堪能。