スポーツ

力道山と出会う5年前「開港百年記念英語論文」特等賞で新聞にデカデカと掲載された【力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~#10】

新聞に掲載された敬子(1959年2月18日付『神奈川新聞』)

新聞に掲載された敬子(1958年5月27日付『神奈川新聞』)

“日本プロレスの父”力道山が大相撲からプロレスに転向し、日本プロレスを立ち上げてから2023年で70年が経つ。力道山はすぐに国民的スターとなったが、1963年の殺傷事件で、39年間の太く短い生涯を終えた。しかし、力道山を取り巻く物語はこれで終わりではない──。彼には当時、結婚して1年、まだ21歳の妻・敬子がいた。元日本航空CAだった敬子はいま81歳になった。「力道山未亡人」として過ごした60年に及ぶ数奇な半生を、ノンフィクション作家の細田昌志氏が掘り起こしていく。第10話では敬子が女子高生時代、努力した英語力が花開いたエピソードを明かす。【連載の第10回。第1回から読む】

 * * *

第10話「開港百年記念英語論文」

 ハリウッドの人気スター、チャールトン・ヘストンからファンレターの返事が来たことは、神奈川県立平沼高校一年生の田中敬子にとって、英語力の自信を抱かせるに十分だった。

 この機会に英文法にも取り組もうと敬子は考えた。外交官になるには会話だけ出来ればいいわけではない。筆記と読解は必須で、前年の青少年赤十字大会で出会った都立駒場高校の大宅映子は、欧米の参加者とさほど苦労もなくアドレスの交換をしていた。一学年しか違わないのに随分と差をつけられている。私も負けてはいられない。

 そこで敬子は、日ノ出町の山手英学院(現・山手学院中学校・高等学校)に通い始めた。戦後間もない1947年に放課後の小学校の教室を間借りして「山手英語会」として発足したこの英語塾は、1960年代には中高一貫教育の私立学校に発展している。敬子は週3日、部活が終わって夜7時から通った。

「私は小学校のときからお隣の家で話していたから英会話はそれなりに自信があったんだけど、英文法はさっぱり。だからテストだって必ずしも100点取ってたわけじゃないんです。だからこの機会にと思って通い始めたんだけど、部活終わりの夜だからクタクタ。そもそも面白いものでもないんでね」(田中敬子)

 しかし、この苦労が思いのほか早くに報われることになる。

 敬子が高校2年生に進学した1958年、横浜は「開港百年祭」で例年になく賑わっていた。5月1日からは「記念式典」「パレード」「国際仮装行列」「大漁まつり」「記念バザー」「港湾労務者表彰式」など数々のイベントが開かれた。その一つとして、横浜日米協会と横浜ロータリー、日米教育資料交換委員会の共催、ジャパンタイムズと神奈川新聞の後援で「横浜開港百年記念英語論文」のコンテストが行われた。論文のテーマは「自由国家群との関連において横浜の将来の役割」。神奈川新聞の記事でコンテストを知った敬子は軽い気持ちで応募した。

「どうせ英文の勉強をしてるんだから、練習のつもりで応募したんです。長文だったから、とにかく英文法を間違えなきゃいい。後は前々から自分が思っていることを伝えたい。それだけ考えたの。一応は準備万端で、書き上げたときは満足感と達成感もあったかも。我ながらよく書けたかななんて」

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン