「腎臓病には、たんぱく質とカリウムの制限が必須と思われがちですが、それはもう昔の話です。特に高齢の日本人は、たんぱく質が標準量よりも少ない人が圧倒的に多く、たんぱく質制限で筋肉量が減り、フレイル(虚弱)になって、ふらつき、転倒、骨折を起こし、最悪の場合は寝たきりになることがあります。カリウムも腎機能に影響を与えないとの研究結果があり、極端にカリウム値が高い人以外は、それほど気にすることはありません。他に腎機能障害がある場合はハム・ソーセージの製造などにも使われるリンの過剰摂取により、腎機能悪化の可能性もあるので、注意が必要です」(山縣教授)
山縣教授の研究では管理栄養士の指導を3か月ごとに10回受けた患者はCKDの進行が緩やかになり、心臓血管疾患発症も有意に減少した。
近年、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬の一部がCKDにも保険承認され、治療効果を上げている。しかし、腎臓は一度障害されると元には戻らない。だからこそ、思い込みにとらわれず、正しい食事制限と適度な運動を取り入れ、死亡や辛く苦しい透析治療リスクの低下に繋げたい。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年2月10・17日号