2013年にユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的に見ても「ヘルシー」というイメージが確立されてきた和食だが、最新の医学に基づいた知見によれば、それは必ずしも正しくないという。AGE牧田クリニック院長で糖尿病専門医の牧田善二さんが解説する。
「“和食なら何でもヘルシー”と考えるのは誤りです。例えばホテルの朝食によくある和定食と洋定食を比べてみても、和定食の卵焼きと、洋定食のパンとジュースに含まれている糖質量は同量。もちろん白米にも糖質が含まれるうえ、和定食には漬けものや焼き魚など塩分が圧倒的に多い。塩分の摂りすぎは高血圧など心疾患のリスクを高めます。和食が優れているとは言いがたい」
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんも和食の塩分の多さを懸念する。
「特にしょうゆやみそなど、日本の調味料には塩分が多い。みそ汁は和食に欠かせない定番メニューですが、毎日のように飲んでいれば塩分過多になる。実際に世界的に見ても日本人は塩分を摂りすぎていて、平均摂取量は1日に約10gです。世界保健機関(WHO)は成人の食塩摂取量として5g未満を推奨しているので、基準をはるかに超えています」
みそ汁の具や煮物、混ぜご飯など和食に頻繁に登場する海藻類にも、海外では健康リスクが指摘されているものがある。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが挙げるのは「ひじき」だ。
「カナダやイギリスではひじきに多く含まれる『無機ヒ素』に発がんリスクがあるとして、国民に摂取を避けるように警告している。無機ヒ素は、胃腸や肝臓障害、貧血のリスクも報告されています」
良質なたんぱく質と油分を含有し、日本が世界に誇る寿司の“顔”である魚介類も、食べ方によっては体に害を及ぼす恐れがある。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
「魚介類は自然界の食物連鎖を通じて、水銀などの毒素を蓄積します。中でも体の大きいまぐろはその量が多く、アメリカでは日本以上に問題視され、妊婦には厳禁だといわれています。確かに魚にはEPAやDHAなど体にいい栄養素が豊富ですが、魚ばかりを選んで食べるのは、やめた方がいい。
特に70才を過ぎたら体力が落ちるため、たんぱく質やミネラルの多い赤身肉を積極的に摂ってほしい」