安倍晋三・元首相(時事通信フォト)
それに対して岸田首相は昨年末に防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を改定して敵基地反撃能力などを閣議決定した。その中に、安倍氏とは決定的に違う現実認識が読み取れるという。長谷川氏が続ける。
「岸田首相は防衛3文書の中に改めて『非核3原則は守る』と盛り込んで、核共有の議論そのものを封じ込んだ。5月に地元の広島で開くサミットで、議長として“核なき世界”をアピールしたいからです。
核シェアリングの議論さえしないというのは、岸田首相はリアルな国際情勢を見ているのではなく、核の危機の中で“核なき世界”を夢見ている。こんな総理がプーチンや習近平をはじめ、各国首脳とまともに渡り合えるとは思えない」
安倍首相は回顧録でこう語っている。
〈外交の基本はリアリズムです。イデオロギーに基づく外交をやっても、誰も付いてきてくれません。世界の国々は、いかに国益を確保するかを巡ってつばぜり合いをしているわけでしょう。硬直的な考え方にとらわれていたら、結局、国は衰退しちゃいます〉
その言葉は、現在の岸田首相に向けた戒めにも思えるのである。
※週刊ポスト2023年3月10・17日号