(時事通信フォト)
「強引な面もあった」(はま寿司関係者)というが、確かに結果を残し、エリート街道を突き進んできた田邊被告。
「プライベートでは、2013年に、神奈川県藤沢市に自宅を購入。いまの奥さんは社内結婚で、3人のお子さんがいるそうです」(全国紙経済部記者)
今回、彼が問われている不正競争防止法は、企業の営業秘密を不正に取得して持ち出すことを禁止する法律で、違反すると10年以下の懲役か2000万円以下の罰金、あるいはその両方が科される。
なぜカリスマは道を踏み外してしまったのか──。
「言うことを聞け」と理不尽な難癖
実は、歯車はゼンショー時代から狂い始めていたようだ。
2月1日の公判では、新たな証拠として、弁護側からゼンショーとはま寿司に向けた田邊被告の謝罪文が公開された。当初はもっと早い段階での謝罪を考えていたというが、遅れた一因としてゼンショー創業者の小川賢太郎代表取締役社長兼会長(74才)との“ひと悶着”が明かされ、法廷には激震が走った。
「小川会長が『ライバル会社に移籍した裏切り者は絶対に許さない。田邊には100億円の損害を負わせる』と話していると聞かされた田邊被告は、謝罪することで会長の感情を逆なですると思い、謝罪文を公開できなかったと主張しています」(別の全国紙社会部記者)
田邊被告は被告人質問で、小川会長はどのような存在かと問われ、「絶対的な権力者」だと表現した。
「小川会長は、重要事項を独断で決める人で、自らを『専制君主』と呼んでいるそうです。徹底的に経営効率を図り、パートやアルバイトにも社員と同じような“モーレツさ”を求めるスタイルでも知られています。2014年頃には子会社のすき家の“ブラック労働”が報じられ、社会問題になった」(前出・別の全国紙社会部記者)
さらに田邊被告は、ゼンショーからカッパ社への転職を決めた経緯に、ゼンショーの小川一政副社長(45才)との軋轢があったことを暴露した。
「小川副社長から理不尽な難癖をつけられた。『この会社で今後やっていくなら言うことを聞け、できないなら未来はない』と言われました」(田邊被告)
小川副社長は、小川会長の長男である。32才の若さで取締役に就任した彼は、明言こそされていないものの、小川会長の後継者と目されている。田邊被告は“次期社長”から「未来はない」と宣言されたと受け止めたのかもしれない。実際、彼は法廷でも「小川会長の長男の方に嫌われ、この会社では未来がないと思い転職しました」と語っていた。
ゼンショーの経営幹部にもかかわらず、「求人サイトに登録して、3〜4社から声をかけられました」と話す田邊被告。カッパ社の要職に就任したものの、苦労は続いたようだ。