「SNAP」と呼ばれる消費者支援制度をはじめとした食料問題や農家への救済制度のあるアメリカ(写真/GettyImages)
将来の自給率は肉も野菜も5%以下
日本が世界に買い負け、入ってこなくなる恐れがあるのは、食料そのものに留まらない。例えばかつては日本が買い付けの主導権を握っていた、牧草や魚粉などの家畜や養殖魚のエサは、いまや中国が大量に高値で買い付けており、日本は高くて買えないどころか、ものが調達できない。
その最たるものが化学肥料原料だ。日本はリンとカリウムを100%、尿素も96%を輸入に依存しているのに、最大調達先の中国は国内需要が高まったため輸出を抑制しだした。カリウムはロシアとベラルーシに大きく依存していたが、ウクライナ紛争によって日本は“敵国”認定され、輸出がストップ。現在、それらの値段は平常時の2倍に高騰しており、原料が入らないために製造中止となった配合肥料も出てきている。
飼料や肥料に加え、現在深刻な問題となっているのが、野菜の「種」も海外に依存しているという事実だ。
日本で流通している野菜の80%は国産だといわれているものの、もととなる種は9割が海外の畑で採集されている。そうした状況下でも国内で奮闘している種苗業者によると、いまや「三浦大根」や「ごせき晩生小松菜」などの在来種ですら、多くはイタリアや中国など海外に依存しているという。そのため、いかに種を国内で確保するかが重要になるにもかかわらず、日本政府はそれに逆行し、国が予算を出して米や麦、大豆の種を県の試験場で作って農家に供給する事業をやめさせるような政策を取っているのだ。
現状の「37%」という食料自給率も諸外国と比較すればとんでもない低さだが、飼料や肥料、種を取り巻く事態を鑑みれば実質はもっと低い。
飼料や種の海外依存度を考慮すると、2035年には牛肉・豚肉・鶏肉の自給率は4%・1%・2%、野菜の自給率は4%と、信じがたい低水準に陥る可能性さえある。いまは国産率97%の米ですらも、国産の「種」を守ろうとしない政策によって、いずれ野菜と同様になってしまう可能性は決して否定できない。