日本で流通している野菜の種の9割は海外頼り(写真/GettyImages)
中国のトウモロコシ輸入量は10倍に
1つ目は、コロナ禍で起きた物流停止がまだ回復していないこと。2つ目は、中国の食料輸入量の激増に伴う食料価格の高騰だ。
実際、2022年の中国のトウモロコシの輸入量は2016年の10倍に増えており、その驚異的な伸びはコロナ禍からの経済回復による需要増だけではとても説明できない。戦争の勃発など、有事を見越した備蓄増加も考えられる。
大豆輸入量も年間約1億トン。一方の日本は300万トンの輸入量に過ぎず、中国の「端数」にもならない。
もし中国が「もう少し大豆を買いたい」と言えば、輸出国は中国への輸出分を確保するために、日本に大豆を売らなくなる可能性すらある。
さらに脅威を感じるのは、海上運賃においても中国と日本の間に大きな格差が生じていることだ。いまや中国の方が高い価格で大量に買う力があるので、コンテナ船も相対的に取扱量の少ない日本経由を敬遠しつつある。そもそも大型コンテナ船は中国の港に寄港できても日本の小さな港には寄港できない。
そのため、まず中国に着港して小さな船に食料を小分けして積み直してから日本に向かうことになるが、当然その分の海上運賃は高騰する。
3つ目は、慢性化した異常気象によって世界各地で農作物の不作が頻発したこと。
そして最後は、ウクライナ紛争の勃発による物流の停止だ。「世界の穀倉」と呼ばれ、ロシアとともに世界で3割の小麦輸出量を占めるウクライナは耕地を破壊され、農業に大きなダメージを負った。
深刻なのは、そうした紛争の影響を危険視した国々が「国外に売っている場合ではない」と自国民の食料確保のため、防衛的に輸出を規制し始めていることだ。その数は現時点で小麦生産世界2位のインドをはじめとして30か国に及ぶ。現在日本は小麦をアメリカ・カナダ・オーストラリアから買っているが、それらの代替国に世界の需要が集中し、食料争奪戦が激化しているのだ。しかも現在、そこに歴史的な円安も加わり、日本は“買い負けて”いる。もしいまの状況があと数年も続けば、私たちの食卓からあっという間に小麦やトウモロコシは消えていく。当然、それらを加工したパンやケーキ、スパゲティといった食品も手に入らなくなるだろう。