ライフ

患者数が徐々に増えるメラノーマ 免疫治療法として「TIL療法」の研究成果に期待

1回の治療ですむTIL療法に注目が集まる(イラスト/いかわやすとし)

1回の治療ですむTIL療法に注目が集まる(イラスト/いかわやすとし)

 悪性黒色腫(メラノーマ)は難治性皮膚がんで、日本でも徐々に患者数が増加している。免疫チェックポイント阻害剤が保険承認され、治療効果は上がっているが、保険診療でも高額な治療費がかかる。そこで1回の治療ですむTIL(腫瘍浸潤リンパ球)療法が注目されている。がん細胞周囲のリンパ球を取り出し、体外で培養、再度体内に戻して、がんを攻撃させる免疫療法だ。

 メラノーマとは、皮膚の色に関わるメラニン色素を産生するメラノサイトという皮膚の細胞から発生するがんだ。

 特に欧米人に多く発症するがんだが、近年は日本人でも増加傾向にあり、10万人あたりの発症数は1.0人から2.7人に増えた。日本人の特徴としては足の裏や手足の爪、爪の周囲などに発生するタイプが約30%と最も多い。

 慶應義塾大学病院肉腫・メラノーマセンターの舩越建副センター長に話を聞いた。

「進行性メラノーマに関しては2014年に免疫チェックポイント阻害剤オプジーボが保険承認されるなど、有望な治療薬が登場しています。しかし、この治療は一時的に効果があっても寛解に至る症例が少ない上に、薬価が高く治療費が高額になってしまう問題点もあります。そのため、何か別の治療法がないかと考えていたとき、海外で実施され、奏効率が高いTIL療法を知り、研究を始めました」

 TIL療法は、がん細胞を直接攻撃するために、がん周囲に浸潤しているリンパ球を取り出して培養し、再び体内に戻す免疫療法の一種だ。

 すでに実施されている免疫療法には樹状細胞療法やLAK(活性化リンパ球)療法などがある。樹状細胞療法は培養した樹状細胞を体内に戻し、リンパ球ががん細胞を攻撃するよう教育する治療法だ。ただ樹状細胞自ら攻撃するわけではないので、破壊力はさほど高くない。LAK療法は血中のリンパ球を体外で培養し、体内に戻す治療法だが、すべてのリンパ球が特定のがん細胞を攻撃するとは限らない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン