藤木は「枯れた花役」
いざ、本番スタート。色とりどりの照明や目を見張るような大道具が用意されたステージ‥‥ではなく、200人入ればいっぱいになってしまう小さな「幼稚園の体育室」の舞台に、客席からの拍手に応えて「どうもー!」と手を叩きながら3人は颯爽と現れた。
ストーリーは、奇抜ながらも大人も子供も楽しめるコメディ要素満載だった。真夏にエアコンが壊れた部屋で立ち往生する男の役を大東が、その修理に訪れた電機店の店員を片桐が演じた。部屋から出ようと窓を開けても扉を開けても、同じ部屋に戻ってきてしまい途方に暮れる2人の前に姿を現すのが‥‥大東がかつて枯らしてしまった鉢植えの花・藤木だ。
「藤木さんがなかなか舞台に姿を見せないと思っていたら、小道具の窓枠を持って黒子として登場したり、やっとセリフがあると思ったら、“枯れた鉢植えのお花役”というなんとも斬新な役どころで‥‥普段の舞台では絶対にありえない役柄を楽しそうに演じていました。大東さんと片桐さんのオーバーリアクションや派手な花のかぶり物を身に付けた藤木さんの姿に、子供たちは大ウケでした。大人も楽しめるように“幼稚園の保護者あるある”なども盛り込まれていて、思わず手を叩いて笑っている人もいました」(前出・観劇した人)
物語のラストでは、藤木が「一度(花を育てると)決めたことはやり遂げてください。あなたが俳優という仕事を活かして100万円稼ぐのなら許しましょう」という謎の言葉を残して消え、大東が「絶対稼ぐ!」と決意を新たにするところで幕を閉じる。
わずか15分の舞台とはいえ、多忙を極める名優たちが幼稚園の体育室という小さな舞台に立った理由は、藤木が発した「100万円稼ぐ」という言葉に隠されていた。
「今回のバザーは、幼稚園の『空調増設費』を得るという目的があったんです。目標額は100万円。藤木さんたちは、売り上げに貢献しようと、忙しいなか子どもたちのために稽古を重ねて舞台に立ってくれたんです。ボランティアだったって聞いてます。多くの保護者が彼らに感謝していました」(前出・幼稚園関係者)
客席の盛況ぶりと、子供たちのために一肌脱いだ3人の表情を見るに、きっと目標は達成できたのだろう。