芸能

「ベテランだけど売れていない」 新たな漫才賞レース・THE SECONDの“M-1にない”悲劇性がもたらす笑い

結成16年以上の漫才師たちは“セカンドチャンス”を掴めるか(写真はツーナッカン)

結成16年以上の漫才師たちは“セカンドチャンス”を掴めるか(写真はツーナッカン)

 結成16年以上の漫才師に“セカンドチャンス”を──。そんな意図で設立された新たなお笑いコンテスト「THE SECOND~漫才トーナメント~」の選考会が終了した。M-1グランプリの決勝経験者ら実力派たちが早くも姿を消す中で、全133組から本戦に勝ち進んだ32組の中には、世間的には“無名”ともいえるコンビもいた。『笑い神 M-1、その純情と狂気』の著者でノンフィクションライターの中村計氏が、選考会の様子をレポートする。

 * * *
 思わずグッときた。

 2月15日、東京証券会館で、「THE SECOND」の選考会がスタートした。18時に開演した初日第2部の5番手に登場したのは、ツーナッカンという中年男性コンビだった。                                                                                                                                                                   
 コンビ結成23年目。名前と顔がまったく一致しなかった。なのに、たまらなくおもしろい。

 ネタの中で、ボケ役の中本幸一は現在、芸人としての仕事はほとんどなく、清掃業のアルバイトで家族を養っているのだと語った。2人はそのペーソスをうまくネタに昇華し、絶妙な塩梅で哀愁を漂わせていた。

 THE SECONDの出場資格は、「プロのみ、かつ結成16年以上」。そして、身を削らなければならない賞レースにあえて参戦する組には、もう一つの共通項がある。それは「売れていない」ことだ。

 今回エントリーした組の中には、客観的に見たら「売れている」と言ってもいい芸人たちもいる。だが、THE SECONDにかけるということは、自分たちの中ではまだ満たされていないのだ。もっと売れたいと渇望している。

 出場条件を知ったとき、いっそのこと結成年数の制限など取っ払ってしまえばいいのにと思った。だが、東京と大阪で五日間に渡って開催された選考会をすべて見終え、この大会はこれでいいのだと思った。もっと言えば、この縛りこそがTHE SECONDの存在意義なのだ。

 ネタに耳を傾けつつ、登場する組のいずれもが16年以上ともに歩み続けてきたのだと思うと、そのことだけで感慨深かった。16年以上も続けていると、どんなに無名の漫才師であっても、例外なくうまい。

 いったい、何のために──。

 そう思わざるを得なかった。

 彼らのしゃべりの技術は、組によっては、まったくと言っていいほど今日まで日の目を見ていない。そのことが切なく、でも、それだけに笑わずにはいられなかった。

 THE SECONDにあって、他の賞レースにないもの。それは圧倒的な悲劇性であり、裏を返せば、圧倒的な喜劇性だった。

 それをもっとも実感したのが、ツーナッカンという広島出身の、いぶし銀のコンビだった。

 THE SECONDという名称は、出場できる大会がなくなり、この大会でセカンドチャンスをつかんでほしい、という願いが込められている。

 THE SECONDが「ファーストチャンス」として位置付けているもの。それは出場条件が「結成15年以内」のM-1グランプリである。言わずと知れた国内最大の漫才コンテストだ。M-1のエントリー数は昨年、ついに7000組を超えた。

 一方、THE SECONDのエントリー数は133組にとどまった。正直なところ、ずいぶんと少ないものだなと思った。

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン