スポーツ

なくならないスポーツ界の体罰 必要悪だと思う人が多かった背景

体罰のニュースが今も続いている(イメージ)

体罰のニュースが今も続いている(イメージ)

 人に暴力をふるうことによって何かを理解させようとするという方法は、誰が聞いても「おかしなこと」だと思うだろう。古くは明治時代に制定された教育令で明確に体罰が禁じられたにもかかわらず、教師が生徒に、指導者が教え子に教育するための体罰という名の暴力が振るわれる時代が長く続いた。ハラスメントをなくしてゆこうという社会全体の動きにまったく連動しないまま、今も一部のスポーツ強豪校では体罰が続いている。ライターの宮添優氏が、一部のスポーツ指導者がいまも体罰を続けられてしまう背景についてレポートする。

 * * *
 スポーツの名門校として全国的に知られる千葉・市立船橋高バレー部、同じく強豪として有名な福岡・大牟田高駅伝部、山梨・日本航空高バレー部など、指導者による生徒への体罰行為が相次いで発覚した。市船高の監督は逮捕され、大牟田高の監督も「行き過ぎた指導をした」と認め、謹慎中だという。

 教員による生徒への体罰は、かつては当たり前に起きていたし、世間も容認していた。かつてと言っても、それは半世紀以上前の戦中世代が指導者だった時代などではなく、21世紀になるころ、いまからせいぜい20年くらい前ですら、非難する雰囲気が薄かった。アラフォーの筆者世代でも体罰は「普通に存在するもの」と考えていたし、実際に小中学校時代に、担任や部活の顧問から叩かれた経験がある人も少なくないだろう。誰もよいことと推奨はしなかっただろうが、必要悪だと思う人が多かった。

 それでも、体罰を苦に自殺する生徒が出るなど社会問題として見做されるようになると、現場からは確かに体罰が減っていったという。東京都内の公立高校教諭・山下亜也子さん(仮名・50代)が振り返る。

「今では、子供達も体罰がいかにダメかということを理解していますし、教員側も、絶対に手を出してはならない、体罰は容認されないという意識を持っています。かつては、仕方ない場合もあるとか、叩かないとわからない場合もあるなど、生徒教員両方が体罰をある程度容認していた。良い意味での変化はかなりあったとおもいます」(山下さん)

鉄拳制裁を「これも愛情だ」とゆがんだ解釈

 一方、冒頭で紹介したように、体罰は根絶されたわけではなく、厳然と存在している。中部地方在住の公立高校教頭・松井大作さん(仮名・50代)は、特にスポーツ関係においては、今なお「体罰容認」の風潮は根強いと話す。

「体罰はダメだと誰もが思っています。しかし、スポーツの世界においては、監督と生徒、コーチと生徒という命じる者と従う者という関係性が一般的な学校生活における関係よりも強く、指導も厳しくなりがちなのは確か。強豪校ともなれば、強権的な監督やコーチがいて、生徒も親も、そして学校ですらコントロールできない場合がある。そうした学校では、全体で体罰を容認するような雰囲気があるんです」(松井さん)

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン