国内

わが息子の名は「赤彗星(シャア)」 聖地・甲子園を目指す“ガンダム一家”の物語

父に、『機動戦士ガンダム』に由来する名前を与えられた3人の子供たちがいるーー。

父に、『機動戦士ガンダム』に由来する名前を与えられた3人の子供たちがいるーー。

 甲子園では春のセンバツ高校野球の熱戦が繰り広げられているが、球児たちの「名前」を見ていて、年々“難読”な名前が増えていると感じる人は少なくないだろう。甲子園を目指す球児のなかでも、一際、個性的な名前を持つ親子に、ノンフィクションライターの柳川悠二氏が話を聞いた。【前後編の前編。後編を読む

 * * *
 2019年の初夏の頃、カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会に臨む日本代表のトライアウトに足を運ぶと、参加者リストにあったヤングリーグ「全播磨硬式野球団」の選手の名前に目が止まった。

 捕手・關口赤彗星――。

 1979年から放映されたアニメ『機動戦士ガンダム』を愛するファンなら、主人公であるアムロ・レイの仇敵で、“赤い彗星”の異名を持つ「シャア」の名が浮かぶかもしれない。実際、名前の横に記されていた読み仮名も「せきぐち・しゃあ」だ。しかし、ガンダムに馴染みのない人にはとても連想できる読みではなく、いわゆるキラキラネームと受け止められてしかたないだろう。

 このトライアウトには12歳以下の有望選手が全国から集まってきていた(合格者の中には、今春のセンバツに出場している大阪桐蔭で3番を打つ新2年生・徳丸快晴などがいた)。赤彗星くんは残念ながら日本代表の一員とはなれなかったが、近い将来、この少年が甲子園にやってくるようなことがあれば話題になるだろうと、その後も筆者は密かに少年の動向を追っていた。彼は現在、実家のある兵庫県を離れ、徳島の古豪・池田高校の新2年生で、県内では注目の捕手に成長している。

 同時に、彼の父親にも興味が沸いた。子供にアニメキャラの名を与えた真意だ。きっと熱烈なガンダムファンなのだろう。しかし、アニメキャラの名を与えられた子供が背負う少なからぬ苦労を顧みず、父親のエゴを子供に押しつけることには疑問符を抱きたくなる。そこで私は、2023年が明けてすぐ、赤彗星くんの父親を訪ねた。ちょうど「王子様」という名前を改名した赤池肇さんが大きな話題となっていた時期でもあった。

 赤彗星くんの父である關口唯(ゆい)さんは、1978年生まれの44歳だ。結婚後、二女二男を授かり、この日、長女が成人式を迎えたという。

「長女は『光宇宙』と書いて、『ララァ』と読みます。18歳の次女は、『風光雲』で『フラウ』、そして16歳の長男が『シャア』です。みんなガンダムの登場キャラクターから名付けました。趣味の競馬などでも、自分は血統などを没頭して調べたくなってしまうたちなんです。ファーストガンダム世代は自分より数世代上になりますが、再放送を見ていてむちゃくちゃ好きになった。ちょうど関連書などを読みあさっていた時期に子供たちが生まれ、名前の由来としました。長男の8年後に生まれた次男にも青い巨星の異名を持つランバ・ラルから、『青巨星』と書いて『ランバ』と名付けましたが、残念ながら生後3か月で亡くなってしまいました」

 命名にあたり妻をはじめとする親族からの反対や反発はなかったのだろうか。

「弟一家も、三国志に出てくる趙雲子龍からとった『子龍』という名を息子につけていて、名前に関しては寛容な家族ではあるんです。自分の『唯』という名前も、子供時代は浅香唯さんの活躍から女性みたいだとバカにされていた。だけど、男としては珍しい名前だったし、決して嫌じゃなかったんですよね。自分の子供たちにも“唯”一無二の名前を付けたかった」

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン