ライフ

緩和ケア医が明かす、看取り現場での「お迎え現象」の実例 「せん妄」とはどう違うのか

(写真/PIXTA)

「お迎え現象」、「せん妄」との違いは?(写真/PIXTA)

 死期が迫った人はしばしば、誰かが枕元に来て自分を連れて行こうとするような反応を見せることがある。これまで3000人を看取ってきた緩和ケア医の奥野滋子さんは、看取りの現場で「お迎え現象」と呼ばれるその言動をたびたび目にしてきた。

「『亡くなったお母さんが、手を握ってくれた。先生、私はもう大丈夫です』と話して息を引き取った患者さんのほか、穏やかな死を迎える人の多くが、“お迎え現象”を経て旅立って行きます」(奥野さん・以下同)

 奥野さん自身も、両親を看取った際に体験したという。

「6年前、父が亡くなる直前、母と2人で看病しているときに『そこにいる人たちにご飯を頼んでくれ。4人いるだろ』と突然言い出しました。『誰なの?』と聞くと、『サッカー仲間だ』と言う。父は昔サッカーをやっていて、確かにすでに亡くなった友達が4人いたんです。父はもうすぐ逝くのだと直感的にわかりました。なかなか受け入れられなかった母も、“お友達に会えるのなら、きちんとお見送りしなきゃ”という気持ちになって、心の準備をすることができたので、最期の時間はとても穏やかなものになりました」

 3年後、母親が亡くなる前も同様の現象が起きた。

「母は亡くなる2週間ほど前から、笑顔で『親が来ているからお風呂を準備して』『お姉ちゃんとおせちを作るから手伝って』と言い始めました。あの世から家族が来てくれていたようです。そのうち『阿弥陀様が来たからお茶を入れて』と言うようになったときは、度肝を抜かれましたが……(笑い)。だけど家族としては、母を大勢でお迎えに来てくれるのはありがたい、もうあの世に旅立っても大丈夫だと感じました」

 医学の世界では、そうした言動を意識障害の「せん妄」と捉えられることも多いが、奥野さんは両者には明らかな違いがあるようだと話す。

「せん妄は話す内容に一貫性がないうえ、何かにおびえているようなたたずまいの患者も少なくないのですが、お迎え現象は本人の話の内容がしっかりしている。また、その表情も穏やかで安心した様子であることも多いようです。ただし、看取る家族がお迎え現象を確認できなかったとしても、それが安らかな死でなかったわけでもなければ、“お迎えがなかった”わけでもない。うちの両親のように会話する事例もあれば、天井を見つめて微笑んだり、手を伸ばしたりして“お迎え”を受け入れている場合もあります」

※女性セブン2023年4月20日号

臨死体験スケール

臨死体験スケール

お迎え現象、臨死体験、前世の記憶…いまわかっていること

お迎え現象、臨死体験、前世の記憶…いまわかっていること

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン