怒りの表明は「自分との対話」から始まる
もし、いまあなたが怒りを感じているのであれば、それはきっと人生を前に進めるエネルギーになるはずだ。しかし、ただやみくもに吐露したり、人にぶつけても何も変わらない。日本の女性学研究の第一人者で、シャンソン歌手としても活躍する田嶋陽子さん(82才)が言う。
「怒りをそのままぶつけるのは破壊的。創造的で生産的、つまりクリエーティブなものにするには、周到な準備が必要です。なぜ自分がこんなに腹が立つのか、何に対して怒っているのか、それこそ本が一冊書けるくらい考えて自己分析しないと伝わらない。
きちんと怒るためには、“自分との対話”が必要不可欠です。じっくり考えて、勉強して、納得して咀嚼できて初めて人に伝えることができる。それをせずにただ感情をぶつけるのは、自分の気持ちをうまく言葉で表現できず、泣いている子供と同じです。
例えば、会社の待遇に怒りを感じているのならば、自分でそれを咀嚼した後、ほかの人と手を組んで抗議してみてもいい。『もし自分が訴えられる側の人だったら、どういうふうに言われたら相手の話を聞けるだろうか』と考える。そのうえで、私だったら友達や恋人を相手に『こういう言い方をしたら、どう思う?』って練習までしてみる。そこまでして初めて怒りは伝わるのだと思う」
怒りは即効性の原動力になるが、何かを変えるためにはじっくり取り組むことも意味があると樋口さんが続ける。
「現在も介護保険の改悪や夫婦の年金格差、選択的夫婦別姓を認めない政党があることに怒りを感じていますが、その気持ちをすぐに発露しようとは思っていません。これらを変えるためにはじっくり取り組むことが必要だとこれまでの人生で実感しているからです。自分が正しいと自信があるなら、諦めず長く続けること。幸い女性は男性より平均寿命が7年長いので、しっかり長生きしてにこやかに怒りましょう(笑い)」
正しく怒れる自分に誇りを持ち、強くしなやかに生きていきたい。私たちの人生は怒りとともにあるのだから。
※女性セブン2023年4月20日号