新人の平木省氏
支部から教会本部に支出も
そもそも高市氏にとって、選挙区である天理市に本部を置く公称信者数118万人の宗教法人・天理教の存在は大きい。以前、本誌(2015年1月1・9日号)では、高市氏が代表を務める「自民党奈良県第2選挙区支部」が教団本部に会費名目で2万円を支払ったほか、教団機関紙「天理時報」を発行する天理時報社に、封筒代や印刷代などを支出していたことを報じている。
2007年3月には、その「天理時報」で教団の資格を持つ信者を表わす「ようぼく」として紹介されたと共産党機関誌「赤旗」が報じたが、高市氏は信者であることを否定している。地元の政界関係者はこう言う。
「このゴミ処理施設建設は、結果的に天理市周辺の自民党議員と天理教でウィン・ウィンの構図になっている。天理教にはカネが入り、議員側は天理教の票にいっそう期待できる。並河市長にいたっては天理教の信者であることを公言し、癒着関係が疑われても仕方ない」
もっとも並河氏は、自身が天理教の教団に所属していることを認めたうえで、「それとこれとは何の関係もない」と断言。また天理教本部に問い合わせると、「ごみ処理場ということで、当初より賃貸という前提でお話をいただいていました」(渉外広報課)と回答した。
並河氏は天理教の土地を購入しなかった理由を「地元住民の要望」と説明した。しかし、入手した天理市が行なった地元住民への説明会の記録によると、建設予定地にほど近い同市和爾町の役員と住民から「普通は(土地を)買収するのと違うのか」(2015年3月27日)、「土地が安い時代になぜ借地にするのか、腑に落ちない」(同年7月25日)などと疑問の声が相次ぎ、並河氏は「場合によっては購入する事も有り得るのだろうと思います」と答えている。
一方、それに先立つ同年3月12日に行なわれた市内の区長会の会議録によれば、並河氏は「最初に地権者の所にお話しに行きました」「借地という事で今、同意をいただいております」と説明したと記録されており、はじめから賃借ありきだったのは明らかだ。
敗れた現職の荒井知事を直撃すると、「何も話せない」と言うばかりだが、当選した維新の山下真・次期知事に話を聞くと、「(土地は)購入したほうが安くなるなら、購入する選択肢をまずは取るべきと思う。(賃料が)不当に高いのならば、問題になるケースはあるのでは」と語った。
そして、苦しい立場にある高市氏にとっては、この問題がさらなる重石としてのしかかる。
高市事務所は、土地の契約が問題になっていること、この問題が保守分裂の原因の1つではないかという問いについては「存じ上げません」とした上で、並河市長から説明を受けたかについても、「天理市長のみならず10市町村長とは度々面会し、環境省へのご相談のセットを致しましたが、土地の所有者や金額等については聞いておりません」との回答だった。
高市氏の師である安倍晋三・元首相は、国有地処分をめぐる森友学園問題(※注)で窮地に立たされた。今また、構図は違えど第二の森友問題ともいうべき土地問題が、愛弟子に降りかかろうとしている。今後も動向を見守る必要がある。
【※注/2017年2月、大阪・豊中市の国有地が、小学校の建設用地として学校法人「森友学園」に鑑定価格より大幅に安く売却されていたことが発覚。9億5600万円の鑑定額に対し、国は地中のゴミの撤去費用などとして約8億円値引きし、1億3400万円で学園側に売却していた。国は当初、売却額を公表せず、学園との交渉記録も「規則に従って廃棄した」と説明。さらに小学校の名誉校長が安倍首相の妻の昭恵氏だったことなどから、国会では野党が売却の経緯や政治家の関与の有無などを追及する大問題になった】
リポート/小川寛大(季刊『宗教問題』編集長)と本誌取材班
※週刊ポスト2023年4月28日号