本来、「視聴者を分散させない」「番宣合戦になるのを避けたい」などの理由から、「できれば初回放送日は他局のドラマとかぶらないようにしたい」というのが編成サイドの本音だけに、今春の状況はレアケースと言っていいでしょう。
火曜にはすでに、昨春にスタートしたNHK・22時45分からの帯ドラマ『おとなりに銀河』、テレビ東京・24時30分からの『何かおかしい2』、TBS・24時58分からの『私がヒモを飼うなんて』、昨秋にスタートしたフジテレビ・24時35分からの『クライムファミリー』、さらにTBS・25時28分からの『往生際の意味を知れ!』(MBS制作)の放送がはじまっていました。
ひと晩で計9作が放送されているところに、ドラマを取り巻く現状がうかがえます。しかし「ドラマ枠が増えている」と言っても、民放ゴールデン・プライム帯から深夜帯に放送される番組の約8割がバラエティであり、ドラマは約1割程度に過ぎません。
視聴者がそれを「多すぎる」と感じるのか、あるいは「もっと増やしてもいい」と感じるのか。やはり、「各局が視聴者のニーズをとらえたクオリティの高い作品をどれだけ作れるか」にかかっているのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。