ライフ

最新「がん検査」事情 “尿一滴”“血液4cc”でどこまでがんを判別できるのか

一度の検査で多くのがんを判別する技術が実用化され始めた(イメージ)

一度の検査で多くのがんを判別する技術が実用化され始めた(イメージ)

 医療技術の進化により新しい検査法も出現した。特に注目が集まるのが「がん検査」だ。従来のようにがんの種類ごとではなく、一度の検査で多くのがんを判別する技術が実用化され始めた。

 その代表例が、尿一滴でがんの有無を調べるN-NOSEだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。

「もともとは九州大学などの研究チームが構築した仕組みで、嗅覚に優れた体長1mmほどの線虫が、がんの匂いに反応することを世界で初めて発見しました。その技術を応用して開発された線虫がん検査で、発見が難しいステージ1のがんに反応するほか、15種類のがんに対応するとされます」

 健常者の尿からは遠ざかる一方、がん患者の尿には集まる線虫の性質を利用するという。

 検査を受けるにはウェブサイトからのキット(税込1万3800円)の購入と、オンライン登録による尿の提出予約が必要。提出後約4週間で結果が知らされるが、がんの種類を特定することはできないので注意が必要だ。

 1回5分、4ccの血液で全身のがんリスクを判定するマイクロCTC検査も注目を集めている。

「欧米では多数の関連論文が発表され、FDA(アメリカ食品医薬品局)承認済みのCTC検査をさらに進化させた『マイクロCTC検査』は、『上皮間葉転換』した悪性度の高い『間葉系のがん細胞』を特異度94.45%の精度で検出できると発表された」(室井氏)

 マイクロCTC検査を提供するセルクラウド執行役員・太田剛志氏(医学博士)が語る。

「マイクロCTC検査は血中に漏れ出したがん細胞自体を捕捉し、その数まで明確に提示します。医療被曝も食事制限もなく、1回5分の採血のみで(血液がんを除く)全身のがんリスクを判定するので、安全で簡単な全身がん検査を受けたい方やCT、MRIなどの画像診断でがんの疑いを指摘された方にぜひ利用いただきたい。がんの疑いに対する有効な判断材料となると考えています」

すい臓がんを「早期発見」

 MRIの高性能化による「全身のがん検査」も登場した。ドゥイブス(DWIBS)だ。

「同じような全身のがん検査であるPET-CTと比較すると、細胞間の水の動きをもとに悪性腫瘍を検索するDWIBSは検査時間も30分程度と短く、造影剤の注射も不要です」(室井氏)

 医療ジャーナリストの村上和巳氏は、血液1滴で13種類のがんを検査するマイクロRNA検査をこう評価する。

「この検査は、予後が非常に悪く早期発見がしにくいすい臓がんを初期の段階で検出する手段として可能性があります。13種類のがん種がわかるというが、実際はすい臓がんを標的にしていると言っていいでしょう」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン